建築と空間 イタリアの巻 1994年

3 ローマ(3)

 

 

 スペイン階段を上がり、怪物の家ツッカリ邸を見る。中には入れないので外観を見るだけだ。

 

 

 


 道を回り込んでヴェネト通りのカーブした坂道を下る。ローマはいくつもの丘に広がった街なのに、あまり坂道の印象がないのはどういう訳だろう。建物やモニュメントに目が行ってしまうからだろうか。



 スペイン広場へ戻りさらに北へ歩けば、数百メートルでローマ旧市街の北門とも言うべきポポロ門に到達する。門内のポポロ広場からは3筋の直線道路が放射状に伸び、それらにはさまれた二つの教会は見た目がそっくりだ。向かって右側がサンタ・マリア・デイ・ミラコリ、左側がサンタ・マリア・イン・モンテサントという。設計者はどちらもカルロ・ライナルディ。左右で土地の形状が違うため、狭い左側のクーポラは楕円形、右側は円形の平面として、同じ大きさに見えるようにしたと解説されている。しかし、広場に面した側の幅はどちらも15メートルほどであり、地図上で見る限りドームの後ろ側でも敷地の幅は変わらない。正確に測れば違うのかもしれないが、仮に言われているような視覚的効果を狙ったとしても、その効果はある線(直線とは限らない)の上に立ったときだけではないだろうか。

 



 ポポロ広場に面してはもうひとつ、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会というのが門に接して建っている。一見、薄汚れて寂れた教会にしか見えないが、建築も内装もベルニーニ、ラファエロはじめ錚々たるメンバーが関わっている。



 ポポロ広場から真ん中のコルソ通りを南下する。長い通りの中間地点にガレリア・コロンナというアーケードがある。内部ではちょうど秦始皇帝展が開催中で、折角来たのに空間を味わうことができない。

 

 

 ガレリア・コロンナのそばにはモンテチトーリオ宮という建物があり、これもベルニーニの設計である。下院の国会議事堂として使われているそうで、そう思って見るせいか、端整ではあっても面白みはない。
 モンテチトーリオ宮の前面はさすがに広場となっているのだが、このあたりから西側はとりわけ街路が混み入っている。飲食店も多く賑やかな街角を2つ3つ曲がると、道の先に巨大な三角屋根とそれを支える列柱が見えた。古代ローマの神殿パンテオンである。前面はちょっとした広場になっていて、入口は北向きである。神殿は南面しているものと思い込んでいたけれども、古代ローマではそのような思想はなかったのだろう。

 

 


 堂内に入れば、屋根の頂上に開いた穴から陽の光が差し込んでいる。陽射しの低いこの季節、照らし出すのはドームの内壁である。現代芸術にも通じる造形は、1800年以上前の建築とは思えない。

 

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