UK & EIRE 周遊 1995年

9 スライゴー

 

 朝の便でアイルランド本島に帰る。この便はアラン諸島の他の二つの島、イニシュマンとイニシイアにも立ち寄った。桟橋に接岸しても、ロープなどかけないから人手もかからない。ロサヴィール港では接続バスから日本人の女子が何人も降りてきた。皆さん一人旅のようで、近寄りがたい。

 ゴールウエイのショッピングセンター内の店でアランセーターを購入する。

 鉄道駅の窓口でスライゴー行きバスの切符を買う。バス会社の名前は「バス・エイラーン」という。エイラーンとは島の意味だそうだ。駅前の停留所から乗り込む。時刻表ではリムリック始発のように思えたのだが、実際はここで車両が変わる。スライゴーで乗り継げば、ベルファストまでアイルランド島西部を縦貫できることになる。

 バスの車窓も列車からの眺めと同じくとらえどころがない。行程の半分ほどのところで街道をはずれて鉄道駅に寄った。ごく小さな駅で、バスの乗降客もいなかった。

 そこからしばらく走ると、国際空港を示す標識があった。周辺に大きな町などないところで、本当に国際空港があるのだろうかと思う。ベルファストや英国行きの小型機でも発着していれば、国際線には違いないだろうが。

 スライゴーが近づくと雪景色となった。

 

 

 スライゴーのバスターミナルも鉄道駅と共用であった。ここもダブリンから伸びる路線の終着駅である。階段を上がって石造りの駅舎内に入る。列車は一日数便だから人影がない。

 町に出て、今夜の宿探しをする。クリスマスは過ぎたのにB&Bどこも休業中である。唯一営業していたホステルに入る。ドミトリーとはいえ1泊たったの5ポンド(850円)と格安なのはともかく、毛布に変な臭いが染みついているし絶対数も足りない。もっとも、他に泊り客はいないし、ここは1泊だけだから我慢するとしよう。

 

 

 この町の人口はゴールウエイと比べると3分の1の2万人程度しかない。だから繁華街と言えるほどの場所もない。なぜか壁をグレーに塗った家が多く、見るからに寒々しい。

 それでもファストフードの店が何軒かあって、ライスかチップス(フライドポテト)つきのチキンカレーが3.50ポンド(600円)、オニオンリングが0.90ポンド(155円)などと値段がどこも同じである。

 

 

 

 

 スライゴーに来たのは郊外にある支石墓を見たいからである。支石墓と言われるものは韓国や日本にもあるから珍しいものではないけれども、洋の東西で違いがあるのか見比べてみたい。

 その支石墓があるカアロウモア遺跡は、ホステル前の道を西へ5キロメートル程行ったところにある。歩いても1時間弱で着いてしまった。

 農場の中に石組みや環状列石が点在しているので、雪を踏んで近づいてみる。余計な看板もなければ柵すらない。夜が明けたばかりの時間なので、とても寒く、古代の息吹を感じるどころではない。早々に退散する。

 

 

 スライゴー周辺はアイルランドの中でも最も寒い地方とされている。テレビによれば、寒波の襲来により今朝はマイナス12度まで下がり、スコットランドでは死者も出たという。通りを歩いていると抜けるように色の白い女の子が多く、ここはアイルランドの秋田県なのだろうと思う。

 

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