バルト三国+ベラルーシの巻 2019年

4 リガ(1)

 バスはリガの目抜き通りを走り、市場を一周してバスターミナルに着いた。この時間ではもちろん市場は眠りについている。ターミナルの外でバイオリンを弾いている人がいる。曲は、ワインレッドの心。

 地元チェーン店のハンバーガーショップで夕食にする。メニューがラトビア語のみでさっぱりわからない。外来語が多くて見当がつけやすかったエストニア語よりも、もっとわからない。店員もあまり感じが良くないので、アリゾナとかいう意味不明のセットを注文し、そそくさと食べて退散する。

 

 

 リガでの宿泊は新市街、中央駅前通りのホステルである。ここも道路に面した入口にはインターホンもなければベルもない。ちょうど出てきた人がいたので事情を話して中に入れてもらう。実は、東京の自宅宛てに暗証番号のメールが届いていて家人が転送してくれていたのだが、うまく受け取れていなかったのだ。

 しかし、このホステルはドアロックの一点を除けば、大変に快適であった。共用キッチンに予約サイトでの評価が9.5であると誇らしげに掲示してあるのも肯ける。

 

 

 部屋の窓を開けると、正面にはルネサンス風の窓を連ねた大きなビルが向かい合っている。首を出すと左手に有名なリガ駅の時計塔も見えている。

 

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 例によって夜明けが遅いので、まだ暗いうちから朝食の買い出しを兼ねて歩き回る。旧市街に入ると、一晩中営業していたらしき飲み屋におやじがたむろっている。

 このあたりにも小さなホテルなどがあったから、泊まっていたらやはり寝不足に悩まされていただろう。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 朝から訪れておもしろい場所といえば、やはり市場をおいて他にない。リガの市場は飛行船の格納庫を利用した建物で、鉄道のガードをくぐった先にある。行ってみると、朝は7時30分から営業しているはずなのに、全体的にまだ準備中といった感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

  場外にも花屋、洋服屋、果物屋などの屋台が並んでいる。小さな赤い実をプラスチックコップに1杯買う。0.75ユーロで、子スモモらしい。かじってみると酸味はあっても甘味は全くない。ビタミンCの補給にはよさそうだ。

 

 

 

 ラトビアのコンビニエンスストアは、マキシマとナルヴェセンが2大勢力だ。この国にもハチャプリというグルジア発祥のパンがあって、サンドイッチ共々食べ比べてみる。軍配は・・・マキシマに上がった。旧市街のショッピングセンターにはマキシマのスーパーマーケットがあって、カフェテリア方式の弁当もある。基本は1キログラム当たり7.99ユーロの量り売りなのだが、小エビの入ったサラダ・バーは別格で11.9ユーロもする。それでも1食分が4ユーロ程度で済むので、そばの実や鰯のフライをパッケージに詰め込んで部屋で食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 中央駅のコンコースを通り抜け、市場のさらに先に聳えている科学アカデミーに行く。スターリンゴシックなどと呼びならわされている様式のビルで、何かと悪口を言われているが、最近のガラス張りのビルなどに比べたらずっと美しさがある。

 ダウガヴァ川の河口近くに位置するリガには土地の起伏がほとんどない。そのかわり、いくつか市内を展望できるできる建物があって、このビルもその一つである。エレベーターで12階まで上がり、さらに3階分を階段で上る。ガラス越しに展望するのかと思っていたら、吹きっさらしのデッキである。市場や旧市街を南側から望む絶好のロケーションではあるものの、風が強くて長くはいられない。

 

 

 

 

 

 

 昼食は市場内の食堂にする。格納庫のひとつがレストラン街になっていて、鮨やラーメンの店まであって賑わっている。しかし、魚部門には燻製のさかなが大量に売られているのだ。イカ、カレイ、タチウオからチョウザメ、ヤガラなど何でも燻してバケツに突っ込んで売っている。だから、せっかく市場で食べるなら魚が食べたい。そう思っていたら、格納庫をつなぐ通路の部分に魚料理の店を発見した。ニシンのフライ盛り合わせに地元のクワスをつけて8.4ユーロと安くはないが、さすがにおいしい。

 

 

 

 市場を出てトラム乗り場に向かう。老人がアコーディオンを弾いている。曲はプラシャニエ・スラビャンキというソ連時代からパレードなどで必ず演奏される行進曲である。

 トラムの切符は1回券でもコンビニエンストアで買えるので便利だ。ただし、カード型の切符で子どもの絵のデザインなのはあまりいただけない。

 リガのトラムはタリンと比べると線路幅も広いし連結両数も多い。しかし、旧市街を囲む堀に沿ってのろのろと走る。ラトビアでもエストニアでも鉄道は路面電車しか乗らないが、残念には思わない。

 

 

 

 

 トラム7系統の終点ループを降りると、アールヌーボー建築が並ぶ地区は近い。通りには沢山の団体観光客が行き交っている。いずれのガイドも言葉はロシア語である。リガでは住民の半数がロシア語話者ということだから、この人たちがロシア本国から来ているのかまではわからない。

 

 

 

 

 建築家の自邸が博物館になっていて、内部が公開されている。金持ちではあっても所詮はフラットだからそんなに広いわけではない。

 

 

 

 

 

 有名な「顔のビル」などを眺めながら、旧市街へ歩いて戻る。旧市街を囲む堀の周りは緑地帯になっている。公衆トイレもあり、注意書きが細々と掲示されている。

 「煙草を吸うな」「落書きするな」はもっともだが、「寝るな」「食べるな」となるとこの場所で?と思うし、「ひげを剃るな」「着替えるな」になるといけないのかな?という気になる。ましてや「入浴するな」と言われても、そもそもそんな設備はない。

 

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