北朝鮮の巻 1996年

2 高麗航空152便

 

 無事にビザを手に入れた(大使館の周辺をぶらついていただけだが)我々は、再び北京首都空港へ向かった。空港の入口につばの広い制帽をかぶった老パイロットが立っている胸に金日成バッジをつけている。この人が操縦していくのだろうか。

 JS152便のチェックインカウンターには、韓国のパスポートを持った人がいる。やはりバッジをつけたグランドホステスとは当然ながら何の障害もなくしゃべっている。それどころか、冗談を言って笑い合ってもいる。

 搭乗待合室に入ると、3人のビジネスマン風の男たちがいた。彼らはインドネシア人であった。

 

 

 機材はソ連製のツポレフ154である。機内に入ると非常に蒸し暑い。他の国ではこんな事はなかったから機材の性能ではない。シートポケットにはうちわが備えられている。

 

 

 ドアが閉まるとすぐにキャンデーが配られる。包み紙にはみかんの絵が描いてあるけれども甘いばかりで何の香りもしない。続いて新聞やパンフレットを配る。パンフレットはなぜかフランス語版で「アメリカ帝国主義の爆弾によって破壊された」などの文章が見える。

 浅黄色の制服を着たグランドホステスたちが手を振って見送ってくれる。

 

 機内食は玉子焼、だし巻き玉子(パインとチェリーが一緒)、きゅうり、パン、カステラ。後から鶏肉とご飯の皿も出てくる。わりかし普通だ。リョンソンという北朝鮮産のビールもある。ギネスを薄めて薬臭くしたような味と匂いがする。

 ようやく冷房が効いてきた。

 飛行時間は1時間30分と短い。時計を日本と同じ時刻に戻す。

 

 

 平壌の順安空港に着き、タラップを降りる。意外にも撮影は自由だという。もっとも見渡す限り、軍民問わず他の機影はひとつも見えないから、撮影しても仕方がない。

 機内では税関申告書も配られたがツアー客にとっては不要で、全員分をまとめて申告する。エックス線検査やボディチェックもあるのだが、どの係官もにこやかで拍子抜けする。胸のバッジを除けば、何ら他の国と変わりは無いのだが、女性係官は例外なく素足に黒い革のパンプスをはいている。

 ターミナルビルを出て、庇の下で免税品を並べて売っているのを横目に見て、バスに乗り込む。案内員は男性二人で、年長のSさんと若いHさんである。いったいどんな人たちなのか、この国では単なるガイド以上の存在とも言われるだけに気になる。

 

 

<3 ぶらり平壌 へ続く>

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