東ヨーロッパの巻 1993年

7 シレジア 

 クラコフからオシフィエンチム(アウシュビッツ)へ行く。

 クラコフの中央駅は現代的な新しいホームが工事中である。屋根のない古いホームの方がずっと味があると思うが、こればかりは致し方ない。

 

 

 

 

 ところで、このホームには、ポーランド式とでも言おうか、Peron、Sector、Torと3つの表示が掲げられている

 Peronは中国式の月台、つまりホームそのものを指すらしい。ということはSectorは、ホームを前後に分けているのか?それならTorは「○番線」なのか?しかし、このふたつは並び順がおかしい。大体、ボードに表示されるのはPeronだけなのだから、その他は不要ではないのか?

 この方式、ハンガリーの東部あたりから出現していたが、謎である。

 

 マルクスみたいな髭をはやした威厳のある車掌が笛を吹いて片手をあげて発車する。

 

 

 

 

オシフィエンチムに着く。第一収容所と、より広大な第二(ビルケナウ)収容所がある。ビルケナウの人の灰を捨てた場所には、今でもひときわ高く草が伸びていて、背筋が寒くなる。

 

 

 

再び電車に乗ってカトヴィツェへ。

 カトヴィツェは工業都市で、観光客は訪れない。駅は空港を思わせる近代的な建物である。出発の案内表示も何となく空港に似ている。

 この街にもトラムがある。街の地図も持っていないので、来た電車に乗る。車内の路線図を見ると、相当に複雑な路線網で、郊外同士をつなぐ系統も多いらしい。運転席との仕切にスリットがあって、そこからお札や切符をやり取りしている。

 

 

 

 

 

 大きなロータリーの真ん中にUFOみたいな建物があるところで左に曲がる。沿線はずっとニュータウン風の広々とした高層アパートが続く。適当なところで降りると、道の片側に広大な公園が広がっている。入っていくと、無人と言っていいほど利用客が少なく、チェアリフトだけが空中を動いている。

 

今夜はここからプラハへ夜行列車で抜ける。夜の駅は列車を待つ乗客で旅情にあふれている。しかし、ベンチに座っていると酒臭い女が手帳を覗き込み、何のつもりか男が食べかけのパンを差し出す。次々と酔っ払いがポリスにしょっ引かれていくのも目にした。駅前にはセックスショップだのエロチック・キノ(映画)だのの看板が並んでいる。

 

 

 

 プラハ行きの2等車は8人コンパートメントに4人の乗客であった。発車するとすぐにパスポートのチェックがあり、続いてポーランド側のパスポート・コントロール、カスタム・コントロールとやってきて、発車後30分で出国手続きは終わってしまった。その後すぐにチェコ側の係官がやってきて、最後にポーランド国鉄の検札が来る。いつ国境を越えたのかはわからないままに、いつしか寝入ってしまっていた。

 

 <8 チェコ へ続く>

 <うさ鉄ブログ トップページ へ戻る>