東ヨーロッパの巻 1993年

6 クラコフ

 

 

 

 ザコパネを離れるのは名残惜しい気もするが、今日はクラコフで泊まることにしている。夕方の列車に乗る。クラコフまでは3時間余り、意外と時間がかかる。運賃は46,000ズオチ(300円)。インフレがまた進行している。ホームで待っているのは、大きな前照灯の「国電」風の電車である。車体の真ん中にトイレがあって、真ん中の車室は狭くて臭い。

 陽の長い季節で、表はまだ暑い。牧草地のあちらこちらに家族総出で働く姿が見える。さして険しい地形でもないのに、2回も進行方向が変わる。

 

 

 

 クラコフでは、サブターミナルとして使われているプワスゾフ駅に着く。駅舎が小さいのはともかく、古都に似つかわしくない陳腐な建物である。以前は駅前まで路面電車が乗り入れていたが廃止されていて、軌道が埋められた跡だけが残っている。大通りまで歩いて電停に行く。15分ごとの運行だが、5つもの系統が通っているから、3分おきに電車がやって来る。電車は、前面が絞られているせいもあって随分と幅が狭く見える。しかもヨーロッパらしくない統一感に欠けた車体である。

 

 

 

 

 中央駅方向に行く系統に乗る。運転手から切符を買える。券面に方陣はないけれども、車内には穿孔器がある。走り出すと併用軌道が多いせいか、乗り心地が悪い。

 旧市街を取り囲む環状線に出ると、中央駅と反対方向に曲がってしまったのであわてて降りる。工事のために迂回しているのだった。

 

 

 

 中央駅横のエウロペイスキというホテルに投宿する。二つ星なので一泊480,000ズオチ(3050円)する。

 旧市街を歩けば、様々なレベルのミュージシャンが街頭に出ていて楽しい。中が雑貨市場になっている、中央広場の中に建つ織物会館、ヴァヴェル城とお決まりのコースを周る。城の中にも大聖堂があって塔に登れる。登ってはみたものの、一方向の窓から覗けるだけで、高さが中途半端だからか、散漫な印象である。

 

 

 

 

 郊外のヴィエリチカ塩坑にも行く。電車が通じていて、本来は町の中心にあるリーネク駅が終点であるが、今日はひとつ手前の「本駅」までの運行である。駅舎はこちらの方が風格がある。

 

 

 

 

 

 塩坑の見学所要時間は2時間40分。なにしろ子どもの頃に読んだ雑誌には、地下に街があり鉄道が通っていて、「住民は皆、青い顔をしているそうです。」と紹介されていたくらいだから、広大なのである。シャンデリアまで塩の結晶でできた「大聖堂」がある。さいごは4階建てのリフトで地上に戻れるのがありがたい。

 

 

 

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