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世界の高いところから

ペーパー一級建築士によるSkyscraperガイドと怪しい旅の話

10年前に友達と澳門に行ったときに知り合った大陸の子が書き残してくれた詩があった。

(澳門でというのがミソではあるが...)


鱼说;你看不到我的眼泪。因为我在水中。

水说;我感觉得到。因为你在我心中。

魚「あなたには私の涙は見えないでしょ。だって水の中にいるんだもん。」

水「君の涙を感じられるよ。だって君は僕の心の中にいるから。」
世界の高いところから

そのときは中国語がまだよく分からなくて、この詩の行間に潜む繊細な描写を理解できなかった。

後で改めて見ると、なんかいい詩だなと思うのと同時に「彼女はこの詩で何を伝えたかったのかな?」と思った。


彼女と午前3時の澳門を散策して廻った。

24時間眠らない新口岸はまさに不夜城の輝きを放っていて、午後11時とさほど変わらない雰囲気だった。

海を見たいという彼女と、海とは呼ぶにはイマイチな澳門の海を見に行った。

フルーツを食べながら、湿度の高い南国の夜風に吹かれながら、彼女は故郷でショップを経営したいと澄んだ眼で語っていた。

今がどうあれ悲壮感は感じられなかった。これは多くの中国人に共通している。

日本の通勤風景における皆の沈んだ表情とどこか対照的だ。
世界の高いところから

この「魚と水」シリーズには他にいくつもの詩があった。

魚と水は、人間と空気みたいな関係。夫婦の間柄にも例えられる。

後で知ったが、これらは当時中国で流行ったネット上での詩のコンテストの優秀作品だった。

こんな詩が流行るのだから中国も捨てたもんじゃない。

きっと、みんな本当はちゃんと空気を読めるはずなんだ(笑)


鱼说:在你的一生中,我是第几条鱼?

水说:你不是在水中的第一条鱼,但却是在我心中的第一条。

魚「あなたの人生の中で、私は何匹目の魚?」

水「君はこの水の中の初めての魚じゃないけど、僕の心の中にまで入ってきた魚は君が初めてだよ。」


鱼说:我很寂寞,因为我只能待在水中。

水说:我知道,因为我的心里装着你的寂寞。

魚「私はとっても寂しい。だってただ水の中で待つしかないんだもの。」

水「知ってるよ。だって僕の心は君の寂しさも包んでいるから。」


鱼说:我永远不会离开你,因为离开你,我无法生存。

水说:我知道,可是如果你的心不在呢?

魚「私はあなたとずっと離れられない。あなたと離れたら生きていけないから。」

水「知ってるよ。でも、もし君が心変わりしてしまったら?」







12年前、僕が鹿児島から福岡に転勤になってまもなくの盛夏、仕事で壱岐に初めて行った。
壱岐は玄界灘に浮かぶ10km四方ほどのなだらかな島で、福岡から高速船で1時間で渡ることができる。
イカ釣り漁船の港があり、漁火が島を取り囲んで幻想的なのだが、当時その島は社内では「鬼ヶ島」と呼ばれていた。

その島には社内で恐れられている販売店があり、そこの社長がとにかく理不尽に怒鳴り散らすことで有名だったのだ。
よりによって、そこで我々の事業部で拡販している住宅の新工法のモデル棟を建てるということで、営業担当と一緒に島に出向いて施工指導をしなければならなかった。
施工指導は2日かかるので島で1泊しなければならない。
日程が決まってから、その日が近づくにつれて憂鬱になっていった。部署の同僚達がさんざんその社長の恐ろしさを大げさに吹聴するもんだからなおさらだった。
「なんでそんな島にそんな客作るんだよ...」

そしてついに鬼退治の朝がきた。
世間は夏休み。しかも夏らしい暑さでいい天気。こんな日の現場は暑くてタイヘンなのだが、それ以上に鬼の存在が憂鬱だ。
高速船が出発する博多埠頭は島に遊びに行くと思わしきグループばかり。
ベイサイドプレイスの大水槽では魚たちが気持ちよさそうに泳いでいた。
「この魚に替わりたい...」とふと思った。
担当営業と合流して真っ赤な高速船「ビーナス」に乗り込んだ。スーツ姿なのは僕らだけだった。

博多港を出港して、防波堤を越えるとやがて浮上航行に移り船は加速し始めた。
左手後方に百道の高層ビル群や福岡ドーム、福岡タワーがはるか彼方に遠ざかっていく。
もう戻れない。
能古島と志賀島の間を通過し、船は玄界灘の大海原に出た。
隣の同僚は普段になく無口で、半分寝ているようだった。
晴天の夏の朝、船で島へ行くとなれば旅気分でワクワクしながら到着を楽しみにするはずなのだが、鬼の棲む島に辿り着きたくない気持ちでいっぱいだった。
やがて、右手に岩山だけの小さな島が見えた。周囲は断崖絶壁で頂上に灯台がぽつんと建っていた。
「あそこで降ろしてくれ!!」
などとワケの分からないことを心の中で叫んでいた。

そしてついに右手前方に緩やかな丘陵地が広がる大きな島が見えた。
「あれが壱岐たい。」
同僚がムクっと起きて呟いた。
「やっぱり。」
僕は唾を飲み込んだ。
島での仕事は明日の夕方の帰りの船まで間違いなく拘束される。覚悟を決めなければならない。

やがて船は大きく右にカーブし、郷之浦港に着岸した。
僕は覚悟を決めて壱岐の地に第一歩を踏み入れた。暑い。でも心はどこかヒンヤリしていた。
真夏の空の下、船着き場の出迎えの人たちをかきわけタクシー乗り場へ。
タクシーに乗ると同僚がひとこと「○○サッシ。」とだけつぶやくとタクシーは走りだした。

やがて丘の上のサーカス小屋かなんかのようなバラックが並んだ一角でタクシーは停車した。
車を降りると確かにそこは販売店だった。
ずんずん先に進む同僚に恐る恐るついていくと、プレハブ小屋の事務所が現れた。
そして、さらに挨拶もせず平気で入口を開けて中に入っていく同僚。中からは物腰柔かそうな女性が出てきた。
「まさか、社長の奥さん??」
事務所の隣の和室で普通にスーツから作業着に着替える同僚。僕もなんか不可解なまま一緒に着替えた。
「社長は...?」
やがて現場に行く準備が整った頃、事務所の隣の作業場の奥から、今起きたばかりのようなボサボサの髪をしたジャージ上下の小太りの少し禿げかかったオッサンがいかにも不機嫌そうに姿を現した。
同僚が軽く僕を紹介すると、
「手抜き工事せんごつ、よう見張っとれ!!」
ろくに目も合わさず吐き捨てるようにひとこと言い残して社長は事務所に消えて行った。
ちゃんとあいさつする間もなかったが、僕はひとこと「はい!!」とデカい声で返事してちょっと気がラクになった。

それから現場でも宴会でも確かに社長は縦横無尽に振る舞っていたが皆がさんざん脅していたほど酷くはなかった。
名物のウニが欲しいと同僚に伝えると、同僚がそのまま社長に言うもんだから「新任の奴がウニなんて贅沢や!」と怒鳴られ一番安い魚だけ食べさせられたorz

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始まりはこんな感じだったが、それから何度か訪問しているうちにそんな社長にツッコミを入れられるようにまでなった。
どうやら、そのときは同僚達が僕を必要以上に脅して楽しんでいたフシもある(笑)
いじられキャラだったからな...
今では、同僚といつかまた壱岐に社長を訪ねたいねと話している。人は見た目や評判によらないもんだなとつくづく思う。
世界の高いところから
「日本のマチュピチュ」と呼ばれる、兵庫県のほぼ真ん中にある竹田城跡
世界の高いところから
たまたまネットで画像を見て、こんな場所が日本にあるんだ!」無性に行きたくなって昨年の3月に行ってみた。
僕は城マニアというわけではないが、日本の城は知らないうちにけっこう廻っているが、この竹田城跡の存在は「行ってみよう!」と思い立った3日前まで知らなかった。
豊岡や城崎に行ったことがあるにもかかわらず、そこからほど近いこの城跡の存在を知らなかったことに、「まだまだ知らないところがいっぱいあるもんだな」と気付かされた。

ちょうど、春期の青春18きっぷを確保してあったのでこれを使って土日で行くことにした。
土曜の朝東京を出発してひたすら普通列車を乗り継いで、夕方には大阪に着いた。(要は2,300円で大阪に行ったw)
大阪で一泊して、日曜は大阪から始発列車に乗り福知山経由で竹田に向かった。

有名な山城の多くはアクセスしにくい山の中にあること多いが、竹田城跡は播但線の竹田駅の隣に聳える標高350m程の虎臥山の頂きにあり、駅裏手から山道をひたすら登れば到達できる。

11時に竹田駅に着き、駅を降りて山を見上げるとはるか山頂付近にギザギザの石垣が見えた。
「あそこまで行くのか、意外にキツそうだな・・・」
世界の高いところから
途中の山腹まで車でアプローチできるが、もちろん僕は駅から歩いた。
とはいえ、300mを一気に登るのは運動不足の僕にはやはり少々キツかった。
山頂にたどり着いて、北側の門から石垣を登って城内に入るとまずは一番高い地点の本丸跡に登った。
本丸からの眺めは城壁を形成する高低差豊かな石垣の全貌が見渡せて、城全体が周囲の山々から浮遊していかのようだった。
世界の高いところから 世界の高いところから
一気に登ってきて乱れた呼吸も静まり、大量にかいた汗もいつのまにか引いていた。
風をいっぱい頬に受けて非日常的な遺構を見下ろしていると、城跡の石垣に乗って天空を漂っている気分になった。
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このためにわざわざ1泊がかりで出てきた甲斐があったなと思った。
これを友達にも見せたくて山頂からFBで画像をアップした(笑)

世界の高いところから 世界の高いところから
帰りは姫路経由で神戸に向かい、夜神戸空港を出発する便で戻った。
僕がよくやるパターン。
どこか遠くに行くときに、往路は普通列車乗り継いだり、船に乗ったり、バスに乗ったりして時間をかけて最終目的地にたどり着き、帰りは飛行機で一気に戻ってくというパターン。
その逆はまずやらないな(笑)