2024/7/30 読むパンダ② | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

JET STREAM Skyway Chronicle


今週は、国際線就航70年を記念した、スペシャルフライト。


日本パンダ保護協会名誉会長でもある、黒柳徹子選出のエッセイ集『読むパンダ』から、元・上野動物園園長の中川志郎による「飼育日誌 パンダと暮らした一ヶ月」を、お届けしています。


今夜は、その第2夜。


1972年10月28日。


中国からやってきたパンダたちの到着により、一種の興奮状態にあった、上野動物園。


パンダの飼育を受け持つ中川たちにとっては、緊張の連続だった。


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「10月30日 パンダの餌は、粗末なものほどいいという事」


パンダの餌は、大きく4つに分けられる。


すなわち、ミルク、ご飯、生卵を混合した、ミルク粥。


りんご、柿などの果実。


とうもろこし、大豆の粉を水で練り蒸した、とうもろこし饅頭。


および、竹と笹である。


私たちが、あらかじめ準備しておいたこれらの餌の材料を見て、北京動物園から付き添ってきた飼育担当者は言った。


「この饅頭の材料は、良すぎて使えない。


あまりにも粒子が細かすぎる。


これでは、パンダは下痢になってしまう」


パンダのために、最上等のものを集めていた私たちは、唖然とした。


早速、粒子の粗いものを探す事にした。


ところが、東京という所は不便な町で、上等なものはいくらでもあるが、粗末なものは、なかなか手に入らないのである。


仕方なく、大豆ととうもろこしをミキサーにかけ、適度の大きさに砕き、間に合わせる。


中国から付き添ってきた飼育員は言う。


「パンダは貴重な動物だというので、どうしても上等の餌をやりすぎがちになる。


だが、これは決して、パンダのためではない。


なるべく粗末な、粗い餌を与える事が、パンダ飼育のコツなのだ」


と。


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「11月1日 パンダの糞には、芳香があるという事」


動物の健康状態を知る方法には色々あるが、その排泄物を調べるというのは、かなり確率が高いだけに、大切な事だ。


したがって、パンダの排泄物は、あだや疎かには取り扱えない。


まず、形、色、臭いを調べ、その量を測り、分解して消化状態を調べるのである。


例によってこの作業をしていた獣医が、突然こう言った。


「あれ〜?


パンダの糞って、いい匂いだなぁ」


そう言われてみれば、なるほど、他の動物の糞にあるような不快臭は、全く無い。


むしろ、かぐわしい匂い、と言うべきかもしれぬ。


なんか、甘酸っぱい、快い香りなのである。



[糞]


こんな糞をする動物なんて、他に見た事が無い。


やっぱり、珍獣だなと思う。


「11月3日 2匹、来園以来初めて日の目を見る事」


1週間の検疫期間も今日で終わり。


到着以来、ずっと室内で種々の検査と餌付けを行ってきたので、外に出る機会は全く無かったのである。


まず、カンカンから運動場に出す事にする。


室内と外を隔てたドアが、音も無くゆっくりと、上がる。


突然に、眩いばかりの光が、差し込んでくる。


びっくりしたように、これを見ているカンカン。


やがて、ゆっくりと出口の側に寄り、首を伸ばして外を見る。


【画像出典】