2024/5/15 光と虹と神話③ | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

JET STREAM・・・作家が描く世界への旅。


今週は、自然写真家・高砂淳二によるフォトエッセイ『光と虹と神話』より、一部編集してお送りしています。


今夜は、その第3夜。


世界のダイバーたちの憧れ、パラオへ、あなたをお連れします。


番組WEBサイトの、高砂淳二の写真と共に、お楽しみください。


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ミクロネシアの海に浮かぶ、パラオ。


第一次世界大戦の後、日本の統治領となり、一時は住民の半分以上が日本人となった、日本とゆかりの深い国だ。


学校や病院、道路などを整備したり、教育にも力を入れ、日本人はパラオ人から好意を持って受け入れられた。


今でも、日本語を話したり、日本名を持つパラオ人も少なくない。


現地の人と話をしていると、会話の中に時々"デンチュー"、"ベントー"などの言葉が出てきたりするから、面白い。


パラオの島々は、パラオ海溝やフィリピン海溝に囲まれ、島々を縁取る浅いリーフの外側は、そのまま1000メートルを超える海底まで、垂直に落ち込んでいる。


そんな底無しの縁には、様々な魚の群れやサメ、イルカ、マンタなどが無尽蔵に集まる事から、パラオは世界のダイバーの、憧れの的となっている。


そんな海で何年か前、訳あって、何日間か夜通しでダイビングをした。


ライトトラップというのを、ご存知だろうか?


光に寄ってくる生き物の習性を利用して、生物を集める方法だ。


それを、海の中でやろうという魂胆だった。


深海にそのまま続く海で、珍しい深海生物や、不思議なプランクトンを見てみようという訳だ。


[ライトトラップ]


新月前後の夜を狙って、深夜、ダイビングを行った。


新月の時には、夜の海も本当に真っ暗である事から、月が大きい時よりも、他の生き物に食べられる確率が低いので、浮遊系の生物たちは、食べ物が多いリーフ近くに集まっているらしい。


海にライトをいくつも沈め、そこに集まってくる、浮遊生物を待った。


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新月の前後を狙って、深夜、パラオでダイビングをした。


夜の海で浮遊物と一緒に漂いながら、それらに目を凝らしてみると、海に浮かぶ塵一つ一つは、重力を無視したような不思議な形をしていて、まるで地球外生物でも見ているかのような、錯覚に陥るほどだった。


しかも海の中は、無重力状態に近く真っ暗で、そこに光に照らし出された、不思議生物が漂っているのだ。


まさに、海の中にもう一つ宇宙があるかのような、神秘体験とでも言っていいような、経験だった。


体長1〜2センチほどのタルマワシは、浮遊しているホヤのようなものを捕まえて、中をくり抜いて食べ、その中に入り込んで暮らす、不気味な生き物だ。


内側に卵を産みつけ、孵化した子供たちは、その家を食べてしまうのだという。


正面から見てみると、何とも不気味な顔をしているが、映画『エイリアン』のモデルになったとの事。


[タルマワシ]


真っ暗な海に漂いながら、地球上にはまだ知られていない不思議な世界が、沢山あるのだろうなぁと、つくづく思った。


【画像出典】