2024/5/14 光と虹と神話② | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

JET STREAM・・・作家が描く世界への旅。


今週は、自然写真家・高砂淳二によるフォトエッセイ『光と虹と神話』より、一部編集してお送りしています。


今夜は、その第2夜。


100種類を超える鳥たちのパラダイス、セーシェル諸島バードアイランドの、どこまでも続く白い砂浜と透明な海へ、あなたをお連れします。


番組WEBサイトの、高砂淳二の写真と共に、お楽しみください。


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インド洋の西部に浮かぶ、セーシェル諸島。


抜けるような青空に、真っ白く小さい点々が動いているのが、見えた。


その動きに目を凝らしていると、僕の目の前を白い鳥が、勢いよく横切った。


遠くの点々の正体は、シロアジサシだったのだ。


[シロアジサシ]


セーシェル諸島の中でも、バードアイランドという島は、アジサシなど多くの鳥の楽園になっている。


シロアジサシには、縄張り意識が極端に強いものもいて、島で散歩しているとしばしば威嚇の意味で、目の前に来てホバリングして、こちらを睨んだり、すぐ近くをかすめ飛んで、脅かしたりしてくる。


しかし、こちらから見れば怖いどころか、その一生懸命な表情が、また何とも言えず愛くるしく、その親鳥が餌を探しに行っている間の、木の枝にちょこんと残された子供の無垢な表情も、またたまらないのだ。


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1周、歩いて1時間ほどのセーシェル諸島にあるバードアイランドには、バードアイランドロッジという、一軒の宿がある。


小さな島に100種ほどの鳥がいて、しかも5月から10月にかけては、なんと200万から300万羽のセグロアジサシが、繁殖のためにやってくるとあって、世界中のバードウォッチャーたちが集まってきて、ここに宿泊する。


[セグロアジサシ]


ロッジでは、産卵のため上陸したウミガメが、海に戻る時に方向を間違えないよう、夜には全室カーテンを閉め、光を外に漏らさないようにするのが決まりだ。


他にも、チェックインする時に、色んな注意事項が告げられる。


全て動物に配慮しての事柄だ。


外灯も、電話もエアコンも冷蔵庫も、何も無い。


自然を満喫するためだけに造られた、宿なのだ。


[ロッジ]


ロッジの周りでは、推定200歳以上、体重350キロの、ギネスにも載っている長寿ゾウガメ、エスメラルダが悠々と闊歩している。


[ゾウガメ]


夕方になると、多くの鳥たちが地上から飛び立って、クウクウ、ギャアギャア鳴きながら旋回する。


夕陽に染まった空を背景に、無数の鳥が黒い塊となって蠢き、空全体から鳥の鳴き声が、地表全体に浸透するように降ってくる。


あくまでも、鳥や野生動物優先の島と宿で、ずっと鳥の声に囲まれて過ごす。


ロッジ近くの枝に留まっている鳥たちも、こちらの事など、あまり気にしない。


ここは鳥の島で、僕らはお邪魔している側なのだ、という事をしっかり把握する事で、鳥たちも安心して観察させてくれるという側面も、ある。


そうすると、島に受け入れられている感覚が、ジワジワと湧いてくるから、面白い。


【画像出典】

https://www.asahi.com/and/article/20180809/300014965/