『JET STREAM』
作家が描く世界への旅。
今週は、旅行作家、山下マヌーと自然写真家、高砂淳二によるフォトエッセイ『色で旅するハワイ』より、一部編集してお送りしています。
今夜はその第3夜。
ハワイには、鳥が運んだ緑、風が運んだ緑、海が運んだ緑、そして人間が運んだ、それぞれの緑の物語があります。
ハワイの緑の旅。
番組WEBサイトの、高砂淳二の写真と共に、お楽しみください。
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空からハワイを見てみると、実に緑が多い。
海底火山が爆発して出来た、ハワイ。
本来は不毛な大地だったにもかかわらず、だ。
[ハワイ]
同じ島でも、日本のように大陸から引き剥がされて島となったのとは違い、太平洋の海の真ん中に、突然姿を現したハワイ。
溶岩が固まって、島となったこの場所には、元々緑なんてものがある訳がなかった。
現在も、火山活動を続けるハワイ島の溶岩大地と同じ、色の無い世界だったという事は、容易に想像できる。
色の無いハワイは、その後およそ500万年の時を経て、現在のような豊かな緑と、花が生い茂る島となっていった。
ハワイ島のキラウエア火山から、カウアイ島のワイメア・キャニオンの間を移動するという事は、500万年の時空を超える旅という事になるから、凄い。
では、一体どうやって、現在のような色鮮やかな緑の島となったのか?
暗黒溶岩大地を、現在のような姿へと変えるきっかけとなった最初の元は、何によってもたらされたのだろうか?
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一体どうやって、ハワイは現在のような色鮮やかな緑の島となったのか?
それは多分、鳥からだろう。
アメリカ大陸とアジア大陸のどちらからも、ほぼ5000キロの距離にある、ハワイ。
大陸間を横断したり、ポリネシアを中心に回遊している鳥たちにとって、そんな場所に島が出来れば、
「ちょっと、ここらで休んでいきますか!」
と、休憩をするのに絶好の場所となる。
移動の途中にふらっと立ち寄り、用を足しては、再び飛び立っていったに違いない。
[鳥]
鳥たちが落としたものの中には、他の場所で食べた木の実や種が含まれている。
それらが、当時不毛だったハワイの大地に落ち、芽が生え、緑が息吹き、やがて背の高い木々へと成長すれば、さらに遠くからでも、島の存在が確認できるようになる。
すると、それまで島の存在に気付かなかった他の鳥たちも、新しい緑を目指してやってきて、またまたさらなる色の基が詰まったものが落とされて。
そんな事を繰り返していくうち、やがて黒かった大地も、色で覆われていったに違いない。
そんな色の配達を、鳥たちは500万年もしてくれている。
その、気の遠くなる年月に驚くのと同時に、一部はコンクリートで固められたにしても、ハワイという場所は、ここを愛する人間たちによって、未だにちゃんとケアされているんだなぁと、そんな事を実感してしまう。
いずれにしても、ハワイにおける命の第一歩。
それは、偉大なる鳥の落とし物から、だった。
そういえば、島と鳥という字が似ているのは、そんな互いの依存関係からなのかもしれない。
【画像出典】