2024/3/19 色で旅するハワイ② | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

『JET STREAM』


作家が描く世界への旅。


今週は、旅行作家、山下マヌーと自然写真家、高砂淳二によるフォトエッセイ『色で旅するハワイ』より、一部編集してお送りしています。


今夜は、その第2夜。


一瞬にして消えてしまう、ハワイの儚い白の旅へ、あなたをお連れします。


『JET STREAM』の番組WEBサイトでは、高砂淳二が撮影したハワイの白の写真も、ご覧いただけます。


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儚いハワイの白。


砕ける波もまた、一瞬にして消えてしまう、儚い白。


そんな波の代表は、憧れのビッグウェーブ。


「オアフのノースエリアや、マウイのホオキパに行けば、いつでも見られるんでしょ?」


と思っている人もいるようだけど、それは無理。


雪や雨と同じで、波もまた、お天気次第。


ハワイに大波がやってくるのは、冬。


日本に低気圧が張り出し、冷え込めば冷え込むほど、つまり強い冬型の気圧配置になればなるほど、波は大きくなって、海を越えハワイにやってくる、とそういう仕組みになっている。


冬のハワイで、


「今年の日本は、暖冬だろ?」


と、サーファーたちがこちらの事情をよく知っているのは、大波を待ち焦がれている彼らは、常に日本の気圧配置をチェックしているから、とそういう訳だ。


やってくる大波の中、最大級なのが、ジョーズと呼ばれる伝説の大波。


[ジョーズ]


10年に1度、やってくるかどうかと言われる、大波。


だから、映像でしか見た事が無いのだけど、彼は感情を持った生き物のよう。


怒りで、荒れ狂っているかのようにも、見えた。


怒りの大波は、湾に近づくと、浜からの風と向き合う事になって、波が高ければ高いほど、彼が風を受ける面積は広くなり、やがて風を巻き込み、彼は粉々に砕けて。


その瞬間に、海色から白色へと、姿を変える。


そんな荒々しい白は、恐怖の白でもある。


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海には、優しい白だってちゃんとある。


オアフ島、カネオヘのサンドバー。


それまで海面だった場所に徐々に姿を現す、砂州の穏やかな白。


[サンドバー]


しかしここの白も、その姿を現すかどうかは、料理じゃないけど塩加減次第。


砂州が姿を現すのは、干潮と満潮のバランスが上手く行った時。


干潮のタイミングにより、それまで海しか無かった場所に、まるで白色が隆起してきたかのように、だんだんと広がっていく。


どうしてここでこんな現象が起こっているのか?


それは、沖合の白いバリアリーフ(珊瑚礁)が、何万年もの間に波で砕かれ、白いさらさらの砂状に変化。


それが海流により、入り江へと運ばれる途中、流れの関係で何ヶ所かに堆積して、その結果このような美しい砂州を作った、という訳だ。


リーフと波と風。


これらの微妙な関係が無ければ、いくつもの偶然が重ならなければ、出会う事は無かった海の白。


そんな白い砂の上に、満月の夜に、連れていってくれるツアーがある。


文字通り周りを海に囲まれ、チャポチャポとさざ波の音をBGMに、夜空の星を眺めたら、どんな風に見えるんだろう?


太平洋で一番宇宙に近い雪と、雲の白から見る星と、海の上の砂州の白から見る星。


見え方は、どう違うのだろうか?


枯れて終わる白。


砕けて終わる、白。


少しだけ、姿を現す白。


溶けて流れてしまう、白。


ハワイの白は、自然の中で儚く、そして潔く散る。


それって、何かに似ている。


そう、日本における、桜のようでもある。


ハワイの白と、日本の桜。


どちらも瞬間的美しさだからこそ、人の心を捉えるのに違いない。


【画像出典】