2024/3/18 色で旅するハワイ① | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

『JET STREAM』

作家が描く世界への旅。

今週は、旅行作家、山下マヌーと自然写真家、高砂淳二によるフォトエッセイ『色で旅するハワイ』より、一部編集してお送りします。

今夜は、その第1夜。

都会の白と言ったら、あなたはどんな風景を思い浮かべますか?

コンクリートで固められた都会で、白という色は、埋没しているかもしれません。

ところがハワイの白は、違います。

これからご案内するのは、どこか主張がある、ハワイの白の旅。

番組WEBサイトの、高砂淳二によるハワイの白の写真と共に、お楽しみください。




雪、波のパイプライン、滝、オールドブリッジ、出雲大社の鳥居、ハイビスカス、マウイオニオン、サンドバー、モアナ・サーフライダー、コーヒーの花、コナスノー、ホワイト・サンド・ビーチ。

ハワイの中にある、白を思い浮かべてみた時、驚くほどスラスラと浮かんでくる。

本来、色の無い色・白は、他の色の中に紛れてしまって、その存在を主張する事などほとんど無いのに。

ところが、ハワイの白は、きっちりと主張している。

白も白として、ちゃんと威張っているのは、なぜなのだろう?

おそらくそれは、この島に存在する沢山の色が、影響しているのだと思う。

赤があるから、白が目立つのと同じ。

沢山の色に囲まれた時、白が白として、際立っていく。

もしも色の無い世界、例えばコンクリートで固められた都会のような場所なら、白はその中で埋没してしまう。

それが証拠に、東京にある白色を頭に思い描く事は、ハワイの白を思い描くより、はるかに困難なのだから。

主張するハワイの白。

しかしながらそれは、儚いと言うか、切ないと言うか。

例えば、雪。

ハワイ州で唯一、雪が積もるハワイ島、マウナケア山頂付近に登れば、一面雪景色。

[マウナケア]

スノーボードだって、スキーだってできるくらいの、積雪がある。

しかし、いくら標高が4205メートルとはいえ、万年雪がある訳ではない。

真っ青な空の青と雪の白とが、見事なコントラストを見せてくれるのは、例年12月から2月にかけての、およそ3ヶ月の間だけ。

雲と雪の白に夕日が当たり、自然の白いキャンバスを、見事な色に染め上げる美しい瞬間も、日が暮れた後の雪に反射する、妖しい月明かりも、わずかこの3ヶ月の間しか、見る事ができない。

だけど、そんな儚くも貴重なハワイの雪の白だからこそ、見る者を必ず感動の世界へと、連れていってくれる。


枯れる白、もある。

渓谷の多いハワイでは、あちこちで糸のように美しく落ちる滝と、遭遇する事ができる。

特に、マウイ島の緑の中を走る、ハナ・ドライブの途中。

カーブを曲がると、突然現れる滝の数々。

これには、誰もがハッとする。

しかしながら、雪の白同様、滝も常にその白い姿を見せてくれている訳ではない。

滝が枯れてしまうのだ。

温暖化の影響なのか、滝が消えてしまう事が多くなった。

と、現地に住む友人も嘆く。

だけどそんな中、ほぼ連日、水を落としている滝がある。

オアフ島、マノアの丘の奥に落ちる、マノア・フォールがそれ。

[マノアの滝]

常に水を絶やす事の無いマノアの滝は、ワイキキの命の源。

海から蒸発した海水が雲になり、その雲がワイキキの奥のマノアの山にぶつかり、行く手を阻まれ、留まる。

水分を多く含んだその雲から、マノアの丘に雨が落ち、その雨が滝となって大地に落ち、川となり、ワイキキへと流れ、海へと戻る。

そして再び雲となって、マノアの山に運ばれ、雨となり、まさに命の源の水の循環を支える、白色の滝。

命の源の滝もあれば、聖なる滝もある。

マウイ島ハナの先、キパフルにある、オヘオ・プール。

別名、7つの聖なる池がそれ。

[オヘオ・プール]

棚田状に水が流れ落ちる、とても美しい滝。

滝と滝の間には池があり、そこで泳いだり、滝に打たれたりして遊ぶ事ができる。

そんな体験型の滝が、なぜ聖なる池なのか?

その理由は、昔ここが、ハワイアンたちが禊をするために、わざわざやってきたという、神聖な滝だったからだ。

訪れた者の心を純白にする、そんな尊い滝であったという事を知れば、一度心を洗いに出掛けてみたくなるのでは、ないだろうか?


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