冬に収穫されるほうれん草は、夏に比べてビタミンCが3倍も多いという。
このほうれん草、パリの市場で見かけた方は、さぞ驚かれる事だろう。
日本に比べて驚く程大きく、葉っぱも肉厚。
あまりに大きいので、束ではなく量り売りされている。
しかもほうれん草の茎には苦味があるので、茎を取るのがフランスの主婦にとっては一仕事。
街のスーパーでは、葉っぱだけが切り取られてパック売りされている。
ところでほうれん草はフランス語で"エピナール(épinard)"だが、レストランのメニューにはエピナールではなく、"フロランティーヌ(フィレンツェ風)"という名が付く。
例えばほうれん草入りのオムレツは、"オムレット・ア・ラ・フロランティーヌ"だ。
"フィレンツェ風"と呼ばれる理由。
それは、フィレンツェの貴族メディチ家からフランスに嫁いできた王妃、カトリーヌ・ド・メディシスがほうれん草が大好きだったからである。
このカトリーヌ程、フランス料理に大きな影響を与えた人物はいない。
美食家だったカトリーヌは、フィレンツェからお抱え料理人を引き連れて嫁ぎ、当時最先端のフィレンツェ料理を伝えた。
しかも、料理だけではない。
当時フランスでは、王族達も手掴みで食べていた。
カトリーヌは、それまでフランスには無かったナイフとフォークを使って、洗練された食事マナーで料理を食べてみせたという。
今もほうれん草の料理に"フィレンツェ風"と名が付くのは、そのカトリーヌが残した偉大な遺産である。
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