「この部屋は、嫁に疎まれたお姑さんが閉じ込められていた部屋だそうです。徘徊や痴呆だったので。ただ、そのお姑さんは毎日毎日、出せー!開けろー!と言って、爪で壁をかきむしったそうです。いまだに残る、相当な怨念だったんでしょうね。」とC氏。

「いまだに残るって?どういう事ですか?」ワシは、反応した。爪痕のところどころに泥汚れの様に見えるのは、実は血の跡に違いあるまいと確信しながらC氏に質問した。

「よく歩きまわっていますよ。物音もしますし。勿論、亡くなっていますよ。だから、開かずの間にしているんです。いつもの事ですから、あなたも今日確認できると思いますよ~。」

と、結構軽くその状況を受け入れているC氏の態度を見て、ワシは既にこの時点でとんでもない魔界村に足を踏み入れてしまったと緊張が高まったが、なんの…。その後に体験した事を今思い起こせば、まだまだ入り口程度の事であった。

改めて、これらはワシが直に体験した事です。今でもこんな事が現在進行形で起こっているのが、ワシが遠野を魔界村と例える所以です。
またこれらの出来事を、地元民は当たり前のように受け入れている事が凄い。遠野物語の発祥地!恐るべし!
「この家には、二つの開かずの間があります。前の家主から引き継ぎました。一つは二階に。もう一つはこの部屋の隣です。どうしてもと言うなら隣の部屋は案内しますが、二階は本当に危険なのでやめましょう。家主さんから固く言われているので、私も開けた事がないのですから!。」

ワシは猛烈に両方見たいと思ったが、踏みとどまった。隣の部屋だけを見せていただく事に合意したのだ。
隣部屋。そこは、窓一つない納戸のようなたたずまいだった。唯一、裸電球が一つあるだけの、昼間でも暗くじめじめした広さ六畳程の小部屋である。

「どうぞ、これを見てください。」

とC氏は言うと、ワシをその小部屋の一角に案内した・・・、とそこには、壁一面を爪でかきむしった様な爪痕が、はっきりと残っていたのだ。これは…、もしかして…。
C氏「この人形を見て下さい。顔、姿勢、髪の毛の長さが違うんですよ。買った時は勿論同じですよ。」

確かに、左右の人形の髪の毛の長さが違う。左側のほうが1センチ程長い。顔ツキも違う。左側は活発そうで微笑しているように見える。口がわずかに、開いているからだ。右側は、目線が上目遣いで大人しく見える。姿勢がわずかに前屈みだからだと判断。口は開いていない。

C氏「この家にはワラシ以外にも、お婆さんと正体不明の方が2人程住んでいます。勿論、僕が住み始める前からですが。2人の住む部屋があるんですが、そちらはちょっと危険なので、ご案内出来ないんですけど…。」

うむ。ワシは遠路はるばる岩手まできたし、そこまで聞かされて検証しないわけにはいかない。ワシは、懇願した!