「うちには、女の子のワラシが2人いるんですよ。数年前に近所の人が気付いたのですが、この家に僕が住み始めてから玄関先で、度々熊や狐をはじめ小動物が目撃される様になりまして…。きっと、あの家のワラシに挨拶に訪れて来ているんだろと。確かに、この家では不思議な事がよくおこりますよ。」と、C氏はさらっと語った。

確かに、ワラシを祭ったその部屋には、近所の方々が供えた供物で二体の日本人形の周りが溢れかえっていた。

C氏は続ける。
「物音や気配なんて、しょっちゅうですよ。うるさ過ぎる時は、静かにしてくれって怒鳴ることも多いんです。それと…」

おいおい、まだ何かしらあるのかこの家には!ワシはまだこの家について、ほんの触り程度の話しを聞いただけだったのだ。
家主のC氏に案内され室内へ。築80年位との事。古いというよりは、汚い。部屋数は6。独身男が一人で住むには広すぎる。

通された和室は八畳程。上座には、二体の日本人形が飾られている。また、その人形達を囲う様におびただしい数の玩具、お菓子、飲み物の類いが供えられている。

ワシは、「こりゃすごい」と思うと同時に、「ワシを脅かすだけにしては、随分と手の込んだ演出だ。」と思った。
盛岡駅から迎えの車に乗り込み、約1時間少々。生涯初めての遠野入り。先ずは役所の関係者に挨拶。待つこと15分。本人と御対面。
大変丁寧な挨拶を頂き関心する。早速自宅まで案内される。11月だったが、前日雪が降ったということで、一面雪景色。山の中にある一軒家。元神主の自宅だったと言うことであったが、外見は普通の古民家だ。

そして、いよいよ室内へ。魔界村遠野への、第一歩。ワシのその後の人生観を大きく変えた事件の開幕である。