目がさめると、居間から話し声が聞こえて来る。C氏が起きているらしい。
ワシは、起こった事をC氏に伝えるべく居間に向かった!

~一部始終話す~

以下、ワシとC氏の一問一答。

C氏「それで、どちらの方角に飛ばされました?」


ワシ「あちらへ」



C氏「それは、早池峰神社の方角ですね。間違いありません。貴方も、遂にワラシにさわられましたね!おめでとうございます!その大きな日本家屋というのは、早池峰神社なんです。」


ワシ「凄いリアルな体験でした。確かにアイテムを持ち帰ったはずなんですが、ありません。 」



C氏「これからの人生の中で、貴方の前にマガダマ、金の指輪、宝石箱が現れるはずです。それは100円ショップに売られているかもしれない、家族が持っているかもしれない、友人から手に入れる事になるかもしれません。それを見逃さず、絶対に手に入れてください。手に入れる事ができれば、貴方になんらかの幸運が訪れるはずです。遠野物語の中にも、同じような体験をした人の逸話が度々登場します。臼や壺、食器などを持ち帰る話しです。家の中で気配はするのですが、だれもいないというのも、同じ状況ですね。持ち帰った人は、いずれも長者になったり、人生幸せに暮らせるというお話です。」


ワシ「襟首をつかまれて、家の中を引きずられたのですが、壁を素通りで物理的にありえないと思ったのですが?」



C氏「いわゆる、うつつ状態ですね。正気でもない、完全な睡眠状態でもない。その間を、うつつと言います。一般的には、幽体、意識体と呼ばれる状態ですから、壁はすり抜けてしまいます。ところで、日本家屋に入る前に鳥居はくぐらされましたか?」



ワシ「いいえ。いきなり室内でした。」



C氏「狐や狸などの動物霊に跳ばされた時は、かならず鳥居をくぐります。彼らはそんなに位が高くないので。あなたは直接室内に行っていますので、連れて行ったのはかなり位の高い存在ですね・・・。座敷ワラシでも高い位の存在か、天狗や神に近い存在じゃないと直接早池峰神社に入ることは許されていません・・・。その巨大な人影というのは、なにか名前を名乗っていませんでしたか?」


ワシ「いいえ。残念ながら・・・。」



C氏「そうですか・・・。その人影が何者なのかわかれば、もう少し詳しくお話しできると思うのですが・・・。」



~しばし一同沈黙~


ワシ「ワシ、もう一度寝てきます!そして聞いてきます、名前を!」



果たして、どうしてそんな事を思いついたのか?夢でも、続きを見たなんて話しはまず聞いた事がない。


しかも、今、まさに「うつつ」の中に登場した人影に、名前を聞こうというのだから・・・。

ワシは再度その巨大な人影に連れられて(跳ばされて)、見知らぬ田舎風景の場所に来ていた。
着地はせず、空中に漂っている。

すると、地面の方角から人の話し声が聞こえて来た。
「どうしよう。家がない。家がない!」

と、その人びと(2人)は嘆き悲しんでいる。
ワシは、「家なんて、また建てればいいじゃないか。」と、心のなかで思った。巨大な人影が、なんのためにワシにその光景を見せたのか?
いまだによく判らないが、ただ唯一思い当たるのは、その当時ワシは自宅マンションを売りに出していたが、なかなか買い手が付かず不安に思っていた時期ではある。それから半年後には、無事売却できたが…。そのことへの、将来への暗示と考えるには都合のよい解釈すぎるだろう。

ワシにその光景を見せた目的を達したのか、人影は「戻るぞ!」と言うと、また猛烈なスピードで宙を跳び始めた!

ドン!

ワシは、強烈なリアリティー、感覚と共に布団から飛び起きた!
すぐさま、手に持っていたはずの切れ端を確認する。
無い。

あの日本家屋から持ち帰ったはずの、まが玉、金の指輪、宝石箱を確認する。
無い!
何も無い!

あれほどリアリティーをもって手に入れたはずの品々が、何も無い!
ワシは、しばし途方に暮れた。
時間は、朝の5時であった。就寝してから、5時間が経過していた…。
広く大きな建物。階段や壁、部屋が幾つもあり、かつそれらが奇妙に入り組んでいて、さながらエッシャーの錯覚絵の如し。

そんな家の中ではあったが、ワシは懸命にまが玉の首飾り、金の指輪、宝石箱を探した。

家の中には、ものすごく沢山の人の気配が感じられるが、誰も見えない。非常な違和感を感じる。ワシは懸命に探索を続け、遂に巨大人影に命じられた全てのアイテムを見つけ出す事に成功した。

ワシは早速、巨大人影の元に向かった。

途中で、とてつもない恐怖感、プレッシャーを振り撒く存在が近づいて来るのが感じられ、ワシは反射的に物陰に身を隠した。

直後、傍らを「牛の顔を持った巨大な二足歩行の怪物」が通りすぎた。



やっとの思いで巨大人影のところに戻った。そういえば、先程見た牛の時にはとてつもない恐怖感を感じさせられたが、この目の前にいる存在には、今まで全く悪意や恐怖感を感じていない事が不思議な気持ちだった。

ワシは巨大人影に、命じられたアイテム全てを持ち帰った事を伝えた。すると…。

「では、次のところへ行くぞ!」

と言うと、ワシの襟首をわしづかみにするやいなや、また凄い勢いで建物の出口に向かって跳び始めた!

ワシは、「何とかして、ここに来たことをC氏に伝えなければ!」と思い、証拠の品を何かしら持ち帰ろうと決意!空中を舞いながら、目の前に一瞬たまたまあった欄間に手をかけた!

木製の欄間は、「バキッ!」と音を立てて折れ、破片がワシの手元に残った!