今から15年ほど前、某飲食店で働いていた時の事。
普段あまり話した事のない新人から、珍しく声をかけられた。
「先輩が好きそうな店見つけましたよ」
好きそうな物とは古い玩具の事だが、いつの間にそんな情報を知ったのだろう?
どんな物が売っていたのか尋ねると、
「いや良く判らないんですけど、
昔のおもちゃみたいなのがあったような…違うのかなぁ」
と、曖昧な返事。
百聞は一見に如かず。その日の深夜に、その場所まで案内をしてもらった。
しかし彼も、たまたま通りかかっただけのようで、
はっきりとは覚えていないようだった。
しかたがないので、大通りに車を止めて、この辺りの細い道を片っ端から捜してみた。
しばらく捜していると、ある道沿いに 「トミカ」 の看板を発見した。
「あっ、あれか!」 と言うと彼は、
「違います。もっと奥の方の右角にあったはずなんで」 と言う。
しかしこの店も怪しい。トミカの看板がついているんだから、
少なくともトミカはあるはずだ。だが玩具店には見えない。
商店街でもない、こんな狭い裏路地に2軒も店があるのかな?
などと思いながら、また彼の後を追いながら捜索を続けた。
更に隣の筋に行ってみると、すぐに
「ありましたありました」 と彼が言って来た。
呼ばれた方へ向かってみると、もう遠くから判った。
「おもちゃ屋じゃないな」
近づいてみると、そこは民芸品のお店。
確かに古めかしい紙人形やでんでん太鼓、木製の小物類が並んでいた。
古い玩具のような物には違いないが、興味の対象物ではない。
彼は 「すいませんわざわざ来てもらったのに、違いましたね」
と、申し訳なさそうにしていたが、そんな事はない。
このお陰でトミカの看板をつけた妙な店を発見できたのだから。
もう一度、その妙な店に戻ってみた。
シャッターが降りているし、暗かったので、最初はよく判らなかったが、
よく見るとそこは自転車屋だった。
自転車屋に何故トミカの看板?
少々疑問に思ったが、そういえば以前、神奈川県の自転車屋に
初期のトミカを売っている店があったのを思い出した。
トミカと自転車の関係は定かではないが、まあ良くある事なのかも知れない。
この日は場所の確認だけして、彼を送り帰宅した。
次回に続く。