さて、今回はCHET BAKERのレコードを紹介してみたいと思います。今回の盤は、当時のイタリアの若手ミュージシャンたちとの共演で、CHETのキャリアにおいて重要な存在となる2人との出会いがありました。

「SOFT JOURNEY」 (IDA)
この録音の直前にイタリア・ツアーをしたときのメンバーで固められていて、CHET(トランペット、ヴォーカル)、MAURIZIO GIAMMARCO(テナー・サックス)、ENRICO PIERANUNZI(ピアノ)、RICCARDO DEL FRA(ベース)、ROBERTO GATTO(ドラムス)によるクインテット編成で、1979年から80年にかけての録音であります。当時のイタリアの若手から中堅が揃っていますが、共同リーダー名義になっていることからもわかるように、ピアノのPIERANUNZIがキーになっていて、オリジナルの作曲からプロデュースまでこなしています。十八番の「MY FUNNY VALENTINE」は、PIERANUNZIの華麗なピアノと、ミュート(弱音器)を使ったCHETの繊細なトランペットによるデュオ編成で奏でられていて、実に味わい深いですよ。その他の曲は、1曲を除いてすべてPIERANUNZIのオリジナルで、CHETのトランペットを念頭に作曲したそうです。タイトル曲の「SOFT JOURNEY」は、穏やかな3拍子で耳に残ります。ダークな雰囲気の「NIGHT BIRD」は、CHETの定番レパートリーに加わり、後に何度も吹き込まれることになります。本作でのPIERANUNZIのピアノ・プレイは、とても美しいのですが、CHETの好みからすると音数が多すぎたようで、スペース(間)と静寂をうまく使うようにアドバイスされたそうです。それが後のPIERANUNZIの繊細なスタイルにつながっていくことになります。CHETの最晩年にも、2人は「LITTLE GIRL BLUE」、「THE HEART OF THE BALLAD」などの共演盤を残していますが、彼のピアノは音数が控えめで静寂を活かしたスタイルになっていて、より深い音楽的共鳴を感じさせてくれますよ。また、本作で出会ったベース奏者のRICCARDOは、抜群にリズムのキープが上手く、ドラムレス編成も得意としていました。彼は、CHETのバンドのレギュラー・メンバーとして長い間、活躍することになります。PIERANUNZIも、RICCARDOも、現在ではヨーロッパのジャズ・シーンの重鎮として活躍していますが、そんな彼らとCHETとの出会いの場になったことからも、興味深い1枚でありますよ。
みなさま、ぜひ「BAKER」へお越しくださいませ。初めての方もお気軽にどうぞ。お待ちしております。
Bar BAKER
日野市多摩平1-5-12 タカラ豊田ホームズ107