ハーブボールを現代科学する -大学講義のメモー まとめ
●はじめに
昔はタイは農業社会でした。
人々は農業や畑作に従事し、収穫時には、腰を曲げたまま作業する必要があり、慢性的な疲労や痛みに悩まされました。
疲労や痛み、凝りや炎症などの症状には、その時代の村社会に適応したタイの知恵が使われていました。
タイマッサージと相まって、タイハーブによるハーブボールの温湿布は、薬を服用しないで、不快を取り除き、和らげる治療法です。
簡単で、コストをかけずに行うことができ、薬の服用により重大な副作用を起こす心配がありません。
●ハーブボール温湿布の意味
ハーブバール温湿布は、熱とタイハーブにより、疲労や痛みを治療することを目的としています。
筋肉の凝りや、はりによる症状を、マッサージの前に湿布を施して、マッサージによって引き起こすかもしれない炎症を防ぐことができま
す。
マッサージと併用、またはマッサージの後での湿布することもできます。
ハーブボール温湿布は、通常、痛みや炎症の不快感のある個所に、熱と圧迫により行われます。
熱の利用による治療は、浅熱を利用したものと深熱を利用したものの2種類あります。
浅熱の利用には、湯たんぽ、温湿布、ハーバルスチームなどがあります。
深熱の利用には、レーザーがありますが、地域が限定され、限られた病院のみで行われ、効果的ですが大変費用がかかります。
ハーブボール温湿布は、浅く、乾いた熱で、圧迫しますが、熱伝導の法則に従って、患部の温度を上げ、免疫機能を高め、肌に潤いをも与
えます。
●ハーブボール温湿布のプロセス
ハーブボールの温湿布は、生のもの、乾燥のものをそれぞれ、または数種類を一緒に、布に包んで、熱で蒸してから、目的の領域を圧迫し
ます。
湿布に使用されるハーブは、薬と促進剤の両方です。
一般的に使用される薬のハーブは、ポンツク生姜(プライ)、こぶみかんの皮または葉、秋ウコン、レモングラス、促進剤としてのハーブは、
塩、竜脳、樟脳です。
使用されるハーブは、症状に適切なもので、アレルギーのないものです。
ハーブの種類によっては、アレルギーを起こすものもあります。
黄プライ、黒プライ、プラップルン(ハマユウ)の赤または白などは、クライアントにアレルギーが出る場合もあります。
■湿布に使用する薬またはハーブを準備
●シングルハーブの使用
プライ、ハマユウ、レモングラスなどを症状に応じて、いずれかの一つのタイハーブを使用します。
●複数のハーブの混合使用
プライ、秋ウコン、コブミカンの皮やコブミカンの葉、ハマユウの葉、タオエンオン、塩、樟脳、竜脳等、一般に良く使用されるタイハーブは、
次のような効能を持っています。
ไพล(Plai)・・・ポンツク生姜
定番のタイハーブで、学名はZingiberpurpureumRosc. ZINGIBERRACEAEです。
地下の大きな根茎は、緑がかった黄色の果肉で、独特の香りがあります。
10か月以上の根茎を、しばしば薬として使用します。
プライの主成分は、プライオイルで、外的には、炎症や痛みを緩和し、筋肉のハリ、筋のひきつりを緩め、捻挫、打撲傷、痺れ、傷を治療します。
内的には、駆風、月経促進、大腸感染症の軽度の弛緩剤として使用できます。
根茎に含まれるエッセンシャルオイルは、腸内の炎症や腫れを緩和することができることが研究で分かっています。
有効成分の4-(4-hydroxy-1-butenyl)ベラトロールは肺内の筋肉を弛緩させ、小児の急性および慢性喘息には、プライパウダーが効果があることが分か
っています。
ขมิ้นชัน(Turmeric)・・・秋ウコン

定番のタイハーブで、学名はCurcumalongaLinn. ZINGIBERACEAEです。
地下の根茎は、濃い黄色または濃い赤オレンジの果肉で、独特の香りがあります。
薬用に使用されるのは通常7~9カ月の、有効成分のクルクミンとエッセンシャルオイルを含む成熟した根茎です。
パウダーを雨水と混ぜて、皮膚の疾患部に塗って、痒みを伴う発疹を治療できます。
研究で、子供のインペチゴ(膿痂疹)には、抗生物質と同様の効果があることが分かっています。
ハーブ―ルの本題からそれますが、ターメリックから抽出されるクルクミン成分は、胆管癌の発生を抑制し、がん細胞を小さくする飛躍的効果がある
ことが、コンケン大学の研究で分かっています。
ผิวมะกรูดหรือใบมะกรูด(Leech Lime)・・・コブミカンの皮または葉

コブミカンは、多年生植物で、学名Citrus Hstrix DC. RUTACEAEです。
皮と葉の両方のエッセンシャルオイルを含み、スパイシーな香りと味がします。
コブミカンの葉の特性は、あざ、咳、吐血を緩和するために使用されます。
腸内のガスを排出するのに役立ちます。
コブミカンの皮の特性は、月経を促進し、腸内ガスを排出し、めまいを緩和することが研究で分かっています。
コブミカンの葉と皮のエッセンシャルオイルは、抗赤痢、抗癌、抗バクテリア、抗カビ効果があります。
ตะไคร้บ้าน(Lemongrass)・・・レモングラス

レモングラスは、タイの熱帯植物で、学名Cymbopogoncitratus Stapfです。
タイ人は、カレー、トムヤム、様々和え物のソースのスパイスとして、良く使います。
新鮮な根茎と葉鞘を、蒸気で蒸留すると、レモングリースオイルと呼ばれる02~04%のエッセンシャルオイルが得られます。
オイルは主なシトラル(citral)の他、ユージノール(eugenol)、ジェラニオール(geraniol)、メントール(menthol)、樟脳、シトラノール
(citronellol)等の物質も含まれています。
レモングラス全体から萌芽を放ち、体内ガス排出、食欲増進、便秘、インフルエンザ、咳、胃の痛み、下痢、関節の痛み、打撲傷、不規則
な月経と生理痛、利尿、鼻血、鼻づまり、腹痛、血尿などを緩和します。
根はリングワームの痛みを和らげます。
エッセンシャルオイルを使用したマッサージで、疲労、筋肉の痙攣、筋のひきつりを緩和します。
ใบมะขาม(Tamarind)・・・タマリンドの葉

学名はTamarindus indica Linn. LEGUMINOSAEの多年生植物です。
タマリンドの葉は酸味があり、血液を浄化し、目のかすみ、目の炎症を治し、粘着性の痰を治し、
痰の排出そ促進、口内炎、咳、風邪の鼻づまり解消します。
外部から弛緩剤として、湿布すると腱を緩め、皮膚病、発疹、皮膚を殺菌します。
タマリンドの葉には、ウイルス、カビ、バクテリアを殺す成分が含まれています。
ใบพลับพลึง(Giant Lily)・・・ハマユウの葉

白ハマユウの学名はCrinum amabile Donn AMARYLLIDACEAEです。
タイの伝統処方では、新鮮なハマユウの葉は、火にかざして柔らかくして、ハーブボールに入れ、
湿布で、捻挫、あざ、腫れを緩和します。
また服用では、吐き気を止めます。
ハマユウの葉に含まれる成分には、バクテリアを対抗し、発汗を促す効果があります。
葉に含まれるアルカロイド(alkaloids)のグループに、リコリン(lyocorine)があり、ウイルス、はしか、ポリオに効果があります。
毒性もあり、さらなる研究が必要です。
เถาเอ็นอ่อน・・・タオエンオン

タオエンオンは、固いツタのつるです。
学名はCryptolepisbuchanani Roem。&SchultPERIPLOCACEAEです。
しぶく酔う味がし、白いラテックス液が出ます。
沸騰させて飲むと、腱を強くし、腱の異常、硬化、疲れ、捻挫、緊張を治します。
葉は吐きそうな味で、ハーブボール湿布は、体の痛みや疲労を治し、腱の痛みと緊張を緩めます。
เกลือ(salt)・・・塩
化学名は塩化ナトリウム(sodium chloride)です。
式はNaClで、純粋な塩は、白く、塩辛く、水溶性です。
海水から生成される塩はテーブルソルトと呼ばれます。
海塩は熱を吸収し、薬を皮膚に浸透させるのを助けます。
細菌を殺す効果もあります。
การบูร(Cmphor Tree)・・・樟脳

樟脳は、中型の多年生植物です。
学名はCinnamomumcamphora Nees exEberm。LAURACEAEで、根や木は薬を作るのによく使われます。
細かく刻んだ後、白くて小さな丸いフレークになり、乾燥すると、香りがよく、スパイシーになり、空気中に放置すると完全に蒸発精製
されます。
タイの薬の香りづけに良く使われます。
ラインに沿った痛み、捻挫、腫れ、関節痛、神経痛を和らげます。
肌のひび割れを治します。
研究では、抗炎症効果があり、軽度の麻酔薬として使用されます。
主に体外で使用され、使用エリアは清涼感があり、使用分に効果があります。
ハーブボールのタイハーブの調合割合は、
ポンツク生姜(プライ) 500g
秋ウコン(カミンチャン)100g
コブミカンの皮と葉(ピウマクルート、バイマクルート)100g
レモングラス(タクライバーン)200g
塩(グルア) 60g
樟脳(カラブン) 30g
竜脳(ピムセン)30g
などです。
薬草を2等分して2つのハーブボール湿布を作ります。
水を入れた鍋で1個蒸し、もう1つは皿に置きます。
●湿布の手順
ハーブボールを蒸してる間、クライアントを、施術箇所により、仰向け、うつ伏せ、横向きに寝てもらい。次の様に施術します。
湿布の熱をテストします
スチーマー内の熱々のハーブボールを、手全体でつかみ上げます。
もう一個のハーブボールを、スチーマー内に入れます。
ハーブボールを、お腹、腕、手の甲に当て、熱さの加減をテストします。
ハーブボールが熱すぎる場合は、少し冷めるのも待つか、他の布を巻きます。
●ハーブボールの温湿布
ハーブボールが熱いうちは、素早く動きで、肌に当てて行きます。
熱が冷め始めたら、長く保持し、押しつけて転がします。
熱がさらに冷めたら、蒸しているもう一つのハーブボールと交換します。
マッサージとハーブボール湿布を交互にするのも良いでしょう。
痛みのあるところ、捻挫の箇所は、1日2回15~30分施術します。
●注意事項
1.肌が弱く、骨が突き出た場所、傷の上に、熱いすぎる湿布をしてはいけません。
2.糖尿病、麻痺、子供、高齢者は、あまり熱くない湿布を使います。
反応が鈍いため、特別に中止し、火傷や水ぶくれになる可能性があります。
3.炎症の発生から24時間以内は、炎症を悪化させる可能性がありますので、温湿布はしてはいけません。
4.ハーブボール湿布の直後はシャワーやお風呂に入ることはお薦めしません。
体の調整が間に合わないかもしれませんし、ハーブの薬効成分が流れ落ちてしまいます。
ハーブボール湿布の効果
皮膚に湿布すると、熱は人体の深いレベルに放射されます。
15~30分間皮膚に湿布を適応すると、熱は皮膚の表面から1~2cmの深さまで筋肉の温度を上昇させます。
さらにハーブが加熱されると、ハーブの薬効成分と、アロマ成分が流れ出し、温められた皮膚に浸み込みます。
ハーブボールの効果は3つに分けられます。
1.温熱効果
2.ハーブ効果
3.アロマ効果
です。
1.温熱効果
湿布が約30分になると、皮膚の温度が約40~45度に上昇し、次のような効果があります。
①痛みの軽減
皮膚の周りの大きな神経線維は、湿布によって加熱され、神経伝導により刺激されます。
これにより、小さな神経線維の神経伝導が抑制されるため、脳の意識が低下しても痛みは発生しません。
そして、神経電流の一部は網状の形態に送られ、視床下部を通り、前頭脳の辺縁領域に、エンドロフィンの放出を刺激します。
エンドロフィンは痛みを和らげるのに役立ちます。そして、痛みの閾値も上げます。
②血流の増加
大きな神経電流は熱によって刺激されますが、脊髄の背側灰白質に入ります。
その後、一部の神経電流は刺激された血管に戻ります。
血管平滑筋の緊張を低下させる物質の分泌を引き起こしたり、血管の拡張を引き起こしたり、血流の増加を引き起こすこれらの物質は、ヒスタミン、プロスタグランジン、ブレデギニンなどです。
1.温熱効果
①痛みの軽減
②血流の増加
③炎症の軽減
患部の組織の温度が上昇すると炎症を軽減します。
細胞は化学反応を起こし、代謝率が上昇します。
組織が、より多くの酸素を使用するようになります。
炎症や負傷した部分は、より修復プロセスが促進され、血流の増加により、身体から老廃物を効果的に排除することができます。
④湿布による関節の詰まりの軽減
湿布による関節の温度の上昇は、関節の動きにくさ、関節の動きにくさに影響を与えます。
温度が低いと、関節部分の抵抗は高く、関節の動きは鈍くなります。
温度が高いと、関節部分の抵抗は低く、関節の動きがスムーズになります。
関節の周りの熱は、コラーゲン組織の収縮をより弾力的にします。
これにより、患者の痛みが軽減され、動きまわることが快適になります。
関節の周りの組織の温度が、温湿布から最大40~45度の場合は、コラーゲンを分解するコラゲナーゼ(collagenase)の酵素活性が増
加します。
その結果、筋肉や筋膜組織の収縮が少なくなり、関節炎の症状が進まなくなります。
2.ハーブ効果
ハーブの効能については、先に説明してきました。
1.温熱効果の④の湿布による関節の詰まりの軽減の効果は、ただの温湿布を施すより、ハーブボール温湿布の方がより効果があるこ
とが、「関節痛、
こわばり、身体活動への影響に関する関節炎患者のハーブボール温湿布の研究」からわかっています。
3.アロマ効果
ポンツク生姜(プライ)、秋ウコン(カミンチャン)、ゴブミカンの皮または葉などのハーブが熱にさらrされると、エッセンシャルオイル
から心地良い香りが放出され、体をリラックスさせ、良く眠れ、痛みや炎症を軽減することができます。
①痛みと炎症を軽減する
エッセンシャルオイル分子は、吸入すると鼻孔に入ります。
これにより、鼻腔内の上皮細胞を介して循環器系に簡単かつ迅速に浸透します。
そして、この分子は肺経路にも下り、ガスが交換されると、肺胞を通し血流に浸透し、体内を循環し痛みと炎症の領域を緩和します。
②体をリラックスさせ良く眠れます
ハーブの香りは、体と気分に影響を与えます。
どこかで慣れ親しんだ良い香りだからです。
エッセンシャルオイルの分子が鼻毛に付着すると、神経インパルスは臭覚受容体に受容され、前頭脳の辺縁領域に送られます。
それは過去の記憶を刺激し、ポジティブな感情を促します。
神経インパルスを伝達する脳の領域の視床下部も、上記情報の伝達を受け、体内に適切な化学物質を分泌させ、リラックスさせ、良く眠れるようになります。
●ハーブボール温湿布とタイマッサージの併用
マッサージをすると死んだ細胞が皮膚から剥がれ、汗腺の詰まりを防ぎます。
皮膚の下の腺と毛包は良く働きます。
赤くなった部分は、血流の増加をあらわしています。
それは体内物質の残留物を減らし、痛みを少なくし、張力によって刺激される大きな神経線維は、小さな神経線維によって引き起
こされる痛みの神
経インパルスを制御し、大きな神経線維の神経電流が、脳部分の辺縁部に入り、エンドロフィンを放出します。
これは、痛みによる反応を低下させ、初期の痛みのしきい値を上げることができます。
スコータイタマティラート大学
