まつやまひろしの“抜けないトンネル”第35回 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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定期的に最新の“思っていること”や弊社で刊行した書籍に掲載したコラムのアーカイブを掲載していきます。

電撃「マ)王2008年10月号コラムより


▼これまでの「抜けないトンネル」コラムアーカイブ
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-10075270773.html


■第35回“ただしその頃には、
あんたは八つ裂きになっているだろうけどな。”



『刀語』(西尾維新)という作品があります。
講談社BOXの企画「大河ノベル」の2007年作品として
12ヶ月連続で刊行された描き下ろし小説です。


12ヶ月ですよ?
毎月1冊書き下ろす……という、ある意味(かなり)無茶な企画です。

その企画そのものは知ってたのですが、
ウチの企画の新里がある日ススメてきたのです。
この『刀語』を。
私に。“面白い”と。

その時、新里から聞いた“あらすじ”はこんな感じでした。


“舞台は江戸時代くらいの日本で、話は基本フィクション。
戦国の時代に全国の武将達が戦っていたのは
実際は『ある刀』の奪い合いだった。

それは伝説の刀鍛冶・四季崎記紀という男が作った
12本の完成形変体刀と呼ばれる刀である。
あの『刀狩令』も実は、その刀を集めるために施行されたのである。
けど、旧将軍家もその12本はどうしても集めることができなかった。

そこで『奇策士・とがめ(ヒロイン)』は、その12本の刀を集めるために、
ある男をスカウトする。
その男は『刀を使わない剣術・虚刀流』の七代目当主である
鑢七花(主人公)であった。
こうして『究極の刀』を集める旅を、皮肉にも『刀を使わない剣術』で行うという、
ある意味誰にも予測のつかない物語が始まるのである。”



うん、面白い。


新里からあらすじを聞いた瞬間に、読むことを決めました。

元々“1年に渡って連続刊行”というのが
「.hack」にも通ずるところがあって、“いつか読もう”とは思っていましたが、
あらすじを聞いた時に“今がその時だ!”と。

結局、全12冊。
既に全巻刊行済みだったこともあって、一気に読み上げました。


うん、実に面白かった。


毎月、連続刊行されることの“利点”がキチンと生かされていました。
文章そのものは独特で、読者を選ぶのかもしれませんが
私は全く問題なくウマが合いました。


きっとこの作家さんが今まで見てきたものとの共通点を
少なからず感じたからだと思いますが。
「.hack」の制作の時にいつも考える“連作の旨み”というもの、
そのものがやはり好みだったのかもしれませんが。


とにかく面白かった。


どれくらいかというと、その後、氏の代表作品でもある
『戯言シリーズ』も全部(9冊)読んでしまったくらいです。
『人間シリーズ』も全部(現在3冊)読みました。
(※2008年当時)

イラストの竹さんも非常に良いですが、
何より西尾維新という作家のキャラクターメイキングが素晴らしい。
“新しさ”という要素に対する貪欲さが素晴らしい。

うーん、世の中広いなあ、なんで今まで読まずに過ごせてたんだろう
なんてコトを考えながら巻末の作者紹介のところをおもむろに見ると…
『西尾維新(1981年生まれ)』と書いてある。

世の中、広いなんてレベルじゃねえ。

現在26歳?デビューが21歳?……
(※2008年当時)


はは、いや、よし、燃えてきた。
ありがとうございます、西尾維新さん、おかげでまた頑張れます。

【ひろしの今月の逸品】

ということで、今月も延長戦。
この『刀語』のあらすじを聞いた時に私は妄想しました。
“自分だったらどう料理するか?”ということですね。

12ヶ月連続刊行で。
12本の刀を集めるためにその所有者と対戦を繰り返す。
それに茶々を入れる忍者集団“真庭忍群12名”。

なるほど、毎月、1人の対戦相手と忍者が出てきて
なんだかんだで1本ずつ回収するとして。
どこで、どうひっくり返せば面白くなるか?

刀の可能性を試した“究極の完成形”とは
どういうネタの刀であるべきか?
そしてその倒し方とは?

やっぱり最初に色々と妄想してから読み始めました。
結果、半分くらいは私が妄想した内容でしたが、
もう半分は私の妄想を遥かに超えていました。
だから“面白かった”ワケですが。

理屈・屁理屈も含めて非常にウマの合う作家さんなんだな、と。
それに尽きると思います。
有名な作家さんなので本誌読者の皆さんは“今頃何言ってんだ”と
思われるかもしれませんが。

もし、未読の方がいらっしゃれば、ぜひ。
オススメの1冊、いや、12冊です。(笑)

ちなみに。
読む順番は『刀語』→『戯言シリーズ』→『人間シリーズ』が
オススメですね。書かれた順番は違いますが。

ということで、今月は(珍しく)漫画ではなく、小説の話でした。
(漫画だけじゃなく、小説も好きなんですよ?意外かもしれませんが。
年に数回、こうしてまとめて読むことが多いのです。)

電撃「マ)王2008年10月号コラムより


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