今日は、カーディフ大学に来てから感じた「学生」の特権について。

 ちょうど20年前の夏休み、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校に語学留学した時は、大陸を縦断しようと乗り込んだアムトラック(アメリカの鉄道です)の車内で会ったおばあさんに「中学生といっても通用するわよ」と言われた紅顔の若者でした。今やIDで年齢確認をするまでもなく、こちらのだれが見ても「大人の学生(mature student)だね」と言われる「おじさん」になりました。

 そうはいっても学生は学生。いろんな局面で学生割引は受けられます。
 たとえば、鉄道ですが、カーディフからロンドンに出る時に使うファースト・ウェスタン(First Western)は、16~25歳向けの学割カードや60歳以上のシニアカードを発行しています。「オレの年齢では対象にならないな」とあきらめていると、申込書に学生証明のただし書きとスタンプを大学からもらうだけで、即日発行してもらえました。

 手数料の£28(約3500円)を支払いましたが、これで1年間、料金が3分の1割引されます。カーディフ~ロンドン間は、最も安い普通車(Coach)の切符で片道£39(約5100円)ですので、1往復するだけでほぼ手数料が取り返せる計算です。

 長距離路線バスのナショナル・エキスプレス(National Express)も、同じような若者向けカード(Young Persons Coach Card)を£10(約1300円)で発行、こちらも1年間、3分の1を割引してくれます。
 ただ、ライバルのメガバス(Mega Bus)が「ロンドンまで片道£1から」といった格安路線を打ち出しているので、お得に行くにはネットであらかじめ料金を比較しておくのが大切です。ロンドンのヒースロー空港やガトウィック空港に行く際には、列車よりナショナル・エキスプレスのバスの方がターミナルに直行して便利だろうと、カードをゲットしました。

 こちらの学割は、これにとどまりません。普段から学生には1割引する店も少なくないのですが、市中心街にある最大のショッピングモール「セント・デイビッズ(St. David's)」は、新年度の学生需要を見込んで、なんと通常の閉店後に学生オンリーのセールを開いているのです。
 「Student Lock In」と題したセールは、10月9日(火)に開催されました。午後8時の一般閉店より前の7時半ごろに並びましたが、すでにこの長蛇の列でした。

 「最高25%オフ」が売り文句でしたが、出店している名だたるブランドが例外なく全品2割引していました。いろんな店内に地元クラブのDJが出張って皿を回して盛り上げる有り様で、「日本だと風営法があるから、こんなセールまかり通るだろうか」と思うほどでした。私は、H&Mで手持ちの少なかった冬服を補充しました。こういうセール、日本でもやると受けるんじゃないでしょうか。中高年に占拠されているデパートも、若者がみなぎって活気づくと思うのですが。

 あと、各種ミュージアムやコンサートでも、学割は威力を発揮します。12日(金)にセント・デイビッズ・ホール(St. David's Hall)であったBBC National Orchestra of Walesのコンサートがそうだったのですが、クラシック系コンサートは学生は半額になります。

 この日は、インターミッションをはさんで2時間半ほどのコンサートが、£6(約780円)で楽しめました。それも、2階席とはいえ、最後列でもなく、こんなに舞台が近い席なんですから。インターミッションも、地元名産のウェルシュ・ケーキ(Welsh Cake)の素朴な味を堪能。月に何回行こうかと思うくらいです。

 同ホールでも、ポピュラー系の割引は、£1といった気持ち程度のようです。展覧会などの会場の看板では「Concession(割引、値引き)」と表記されていることも多いですが、まず学割がありますので、学生IDカードはどこへ行くにも忘れずに。

 大学生協にあたるStudents' Unionのショップでは、新聞のうち、ガーディアン紙が、月曜から金曜は定価£1.2(約150円)のところ、学割がきいて£0.5(約65円)で買えます。
 とはいえ、手に取るのは先生らしき年配の方ばかりで、学生は少なそうです。英語の先生たちも「毎日、新聞を読み、BBCラジオを聞いて勉強しなさい」と言うのですが、クラスメイトには「ネットで読めるのに、あなたはなぜ新聞買ってくるの」と不思議がられています。「こんな良質な新聞がこの値段で読めるのに、買わないんだね」とは言えずにいます。もう、そんな時代なんですよね。

 ということで、大阪人の私は、これからも「学生」の本分を追求して参ります。イギリスの学割情報がございましたら、ぜひお寄せください。
 10月14日は、日本では「鉄道の日」。私は、かつての鉄道記念日という呼び名の方がしっくり来るのですが。1972年(明治5年)のこの日、東京の新橋~横浜間に日本初の鉄道が開業しました。今年は140周年の節目です。

 この日本初の鉄道は、線路も橋もイギリスの技術で、イギリス人技師の手で造られました。鉄道博物館に残る1号機関車もイギリス製。イギリスは世界の鉄道発祥の地です。子どもの頃から鉄道が好きな私は、イギリスの鉄道にあこがれがありました。

 その思いは、9月26日(火)、ビートルズの名所巡りのために、ロンドン・ユートン(Euston)駅からリバプール・ライムストリート駅(Lime Street, Liverpool)に向かう際、ヴァージン・トレイン(Virgin Train)に乗った時、頂点に達しました。


 新幹線を思わせる流線形のフォルム。振り子電車なのでしょう、カーブでもスピードを落とさず、右に左に傾斜させて快走します。280キロメートルほどの距離を2時間あまり。
   帰りは9月28日(木)、午後の乗客が少ない時間帯だったので、ファースト・クラス(First Class)に乗り込みました。2列+1列のゆったりとした車内、ファースト専用の乗務員2人が入れ替わり来ては、温かいコーヒーやホットチョコレート、アルコールや冷たい飲み物、ケーキやクッキーなどのリフレッシュメントをひっきりなしに出します。昼食に買ったバーガーキングはいらなかった? 思わず車内で笑みがこぼれます。

 もはや飛行機のファースト以上なのでは? 食堂車も消えた日本からすると、うらやましい限りです。しかも、これが1人£49=約6300円でした。行きの普通車(Coach)は夜の乗客が多い時間帯だったこともあり、たしか£78=約1万円でしたので、それより安く乗れたのです。
 これは、イギリスの鉄道・長距離バスは、すでに日本でも活発になってきた格安航空(LCC)のようなチケットの販売スタイルになっていて、前日までインターネット予約なら割安で買えるのです。特に、乗客の少ない時間帯では、こうしたファースト・クラスと普通車の逆転現象まで生じるというわけです。

 しかし、間を置かずに、イギリスの鉄道の「暗部」も体験しました。

 9月29日(土)、カーディフから列車を乗り継ぎ、ロンドン郊外のギルフォード(Guildford)で大学時代の先輩たちと再会、夕食をともにした後、ギルフォード駅から再び電車に乗り、乗り継ぎ駅のレディング(Reading)に向かいました。時刻表上では、乗り継ぎ時間は10分弱。プラットホームは隣接しているので、十分な時間があるはずでした。

 しかし、レディング駅のホームに入る目前で赤信号が続き、電車は10分近く立ち往生。別の電車が止まっている同じホームの後方に入り、懸命に隣のホームに走りましたが、カーディフ行き最終列車は走り出していました。ガトウィック国際空港から乗客もたくさんいたのですが、落胆の表情で見送るしかありませんでした。私もなすすべなく、急きょロンドンに行って1泊するしかありませんでした。

 ギルフォード~レディング、レディング~カーディフとも、ファースト・ウェスタン(First Western Railway)という同じ会社の列車でした。日本なら、最終電車であることを考えると、車掌が連絡を取り、乗り継ぎ待ち要請を出して、カーディフ行き最終列車はダイヤより遅れても乗り継ぎ客を乗せたうえで発車したはずです。しかし、そういった連携がまるでなく、駅も乗り継ぎ損ねた乗客へのフォローがありませんでした。
 このサービスレベルには、首をかしげざるを得ません。

 背景には、日本の国鉄民営化に刺激される形で、列車運行と線路保守・運営の「上下分離」方式で民営化したことがありそうです。現に、レディング駅のホームは、複数の鉄道会社が乗り入れており、それがホーム目前の立ち往生につながった可能性も考えてしまいます。

 イギリス人も多分に「上下分離」方式に問題を感じているようです。
 ロンドンからグラスゴー、マンチェスター、リバプールなどを結ぶウェスト・コースト・メインライン(West Coast Mainline)は日本なら東海道新幹線でしょうが、ヴァージン・トレインが1997年から15年契約で運行してきました。ところが、契約切れを見据えて、政府が昨年、新たな参入を促しました。
 応募のあったヴァージンを含む4社を検討した結果、ファースト・ウェスタンを運行するファースト・グループと契約することが固まったが、ヴァージンの反対や署名活動もあり、政府が計画を撤回。ヴァージンとの契約切れも迫り、国会で対応が議論されています。

 イギリスのメディアでは、「もう一度、国民のための国鉄に戻せ」といった声も聞かれます。国民にはヴァージン継続の声が多そうですが、なぜファースト・グループへの移行の話が進んだのか、やや不可解です。
 半面、ドル箱の東海道新幹線をJR東海が独占的に運行しているよりも、JR他社も交えた定期的な入札で運行会社を決める方が「フェア」な価格競争を呼ぶのか、などとも考えてしまいました。

 ウェスト・コースト・メインラインの問題は、ガーディアン紙の記事でご覧ください。
 http://www.guardian.co.uk/uk/2012/oct/03/virgin-rail-west-coast




というわけで、【後編】はウェールズのデータになります。

Wales is approximately 170 miles long and 60 miles wide; 8000 square miles in total.
広さを換算すると、20700平方キロ。日本の秋田県と山形県を合わせたくらいの広さということになります。

Over 2.9 million people live in Wales; they comprise almost 5% of total population of Britain.
人口は茨城県(296万人=2010年)と同規模ということになります。英国全体の5%しかないんです。これでは、英国への経済依存度が高い分、スコットランドみたいな独立運動は起こらないでしょうね。

The Welsh language is now spoken by over 500,000 people, mostly in the north.
公用語のウェールズ語を話す人は50万人以上で、やはり北部に多いそうです。南部のカーディフは、人の会話では耳にしませんが、駅や店内の放送に耳を澄ますと聞こえてきます。

The distance from London to Cardiff is 155 miles and takes about 3 hours by car.
ロンドンからは西へ約250キロ。鉄道だと、ロンドン・パディントン駅から約2時間でカーディフ・セントラル駅に着きます。

In 1302, the conquering English king EdwardⅠgave the title of the Prince of the Wales to his eldest son.
ウェールズがイングランドに征服されたのが1302年。以来、英国皇太子は歴代、プリンス・オブ・ウェールズの称号を名乗っています。マンチェスター出身らしい英語の先生は「ウェールズ人にとっては最も屈辱的な年でしょう」と解説しつつ、連日降りしきる冷たい雨にへきえきして「こんなだから、イングランドはウェールズを併合したいと思わなかったんだよ」とこぼしたのが印象的でした。

The Welsh village with the longest name in Britain has more than 50 letters in its name.
この地名、リスニングで聞き取りさせられたんですが、全然できませんでした。正解は「LLANFAIR PWYLL GWYNGLL GOGERY CHWYRN DROBWLL LLAN TYSILIO GOGO GOCH」。58字でした。英訳から和訳すると、「聖チリオ教会の赤い洞窟のそばの、急な渦巻きの近くの、白いハシバミの木々の小さな池のそばの聖メアリー教会」となります。鉄道の駅名でも、世界一長いのはウェールズと聞いたことがあります。

ウェールズゆかりの著名人だと、劇作家で詩人のディラン・トーマス(Dylan Thomas)がウェールズ第二の都市スワンジー(Swansea)出身。あと、1804年に初めて自作エンジンの蒸気機関車の列車をウェールズで走らせたリチャード・トレビシック(Richard Trevithick)、ハリウッドスターで、エリザベス・テイラーと2度結婚したリチャード・バートン(Richard Burton)などがいます
ミュージシャンは、また機会を改めて。

こんなところで、【後編】もお開きにしたいと思います。

あわせて【前編】もご覧ください。
http://ameblo.jp/cbs48hours/entry-11377558557.html