10月14日は、日本では「鉄道の日」。私は、かつての鉄道記念日という呼び名の方がしっくり来るのですが。1972年(明治5年)のこの日、東京の新橋~横浜間に日本初の鉄道が開業しました。今年は140周年の節目です。
この日本初の鉄道は、線路も橋もイギリスの技術で、イギリス人技師の手で造られました。鉄道博物館に残る1号機関車もイギリス製。イギリスは世界の鉄道発祥の地です。子どもの頃から鉄道が好きな私は、イギリスの鉄道にあこがれがありました。
その思いは、9月26日(火)、ビートルズの名所巡りのために、ロンドン・ユートン(Euston)駅からリバプール・ライムストリート駅(Lime Street, Liverpool)に向かう際、ヴァージン・トレイン(Virgin Train)に乗った時、頂点に達しました。
新幹線を思わせる流線形のフォルム。振り子電車なのでしょう、カーブでもスピードを落とさず、右に左に傾斜させて快走します。280キロメートルほどの距離を2時間あまり。
帰りは9月28日(木)、午後の乗客が少ない時間帯だったので、ファースト・クラス(First Class)に乗り込みました。2列+1列のゆったりとした車内、ファースト専用の乗務員2人が入れ替わり来ては、温かいコーヒーやホットチョコレート、アルコールや冷たい飲み物、ケーキやクッキーなどのリフレッシュメントをひっきりなしに出します。昼食に買ったバーガーキングはいらなかった? 思わず車内で笑みがこぼれます。
もはや飛行機のファースト以上なのでは? 食堂車も消えた日本からすると、うらやましい限りです。しかも、これが1人£49=約6300円でした。行きの普通車(Coach)は夜の乗客が多い時間帯だったこともあり、たしか£78=約1万円でしたので、それより安く乗れたのです。
これは、イギリスの鉄道・長距離バスは、すでに日本でも活発になってきた格安航空(LCC)のようなチケットの販売スタイルになっていて、前日までインターネット予約なら割安で買えるのです。特に、乗客の少ない時間帯では、こうしたファースト・クラスと普通車の逆転現象まで生じるというわけです。
しかし、間を置かずに、イギリスの鉄道の「暗部」も体験しました。
9月29日(土)、カーディフから列車を乗り継ぎ、ロンドン郊外のギルフォード(Guildford)で大学時代の先輩たちと再会、夕食をともにした後、ギルフォード駅から再び電車に乗り、乗り継ぎ駅のレディング(Reading)に向かいました。時刻表上では、乗り継ぎ時間は10分弱。プラットホームは隣接しているので、十分な時間があるはずでした。
しかし、レディング駅のホームに入る目前で赤信号が続き、電車は10分近く立ち往生。別の電車が止まっている同じホームの後方に入り、懸命に隣のホームに走りましたが、カーディフ行き最終列車は走り出していました。ガトウィック国際空港から乗客もたくさんいたのですが、落胆の表情で見送るしかありませんでした。私もなすすべなく、急きょロンドンに行って1泊するしかありませんでした。
ギルフォード~レディング、レディング~カーディフとも、ファースト・ウェスタン(First Western Railway)という同じ会社の列車でした。日本なら、最終電車であることを考えると、車掌が連絡を取り、乗り継ぎ待ち要請を出して、カーディフ行き最終列車はダイヤより遅れても乗り継ぎ客を乗せたうえで発車したはずです。しかし、そういった連携がまるでなく、駅も乗り継ぎ損ねた乗客へのフォローがありませんでした。
このサービスレベルには、首をかしげざるを得ません。
背景には、日本の国鉄民営化に刺激される形で、列車運行と線路保守・運営の「上下分離」方式で民営化したことがありそうです。現に、レディング駅のホームは、複数の鉄道会社が乗り入れており、それがホーム目前の立ち往生につながった可能性も考えてしまいます。
イギリス人も多分に「上下分離」方式に問題を感じているようです。
ロンドンからグラスゴー、マンチェスター、リバプールなどを結ぶウェスト・コースト・メインライン(West Coast Mainline)は日本なら東海道新幹線でしょうが、ヴァージン・トレインが1997年から15年契約で運行してきました。ところが、契約切れを見据えて、政府が昨年、新たな参入を促しました。
応募のあったヴァージンを含む4社を検討した結果、ファースト・ウェスタンを運行するファースト・グループと契約することが固まったが、ヴァージンの反対や署名活動もあり、政府が計画を撤回。ヴァージンとの契約切れも迫り、国会で対応が議論されています。
イギリスのメディアでは、「もう一度、国民のための国鉄に戻せ」といった声も聞かれます。国民にはヴァージン継続の声が多そうですが、なぜファースト・グループへの移行の話が進んだのか、やや不可解です。
半面、ドル箱の東海道新幹線をJR東海が独占的に運行しているよりも、JR他社も交えた定期的な入札で運行会社を決める方が「フェア」な価格競争を呼ぶのか、などとも考えてしまいました。
ウェスト・コースト・メインラインの問題は、ガーディアン紙の記事でご覧ください。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/oct/03/virgin-rail-west-coast
この日本初の鉄道は、線路も橋もイギリスの技術で、イギリス人技師の手で造られました。鉄道博物館に残る1号機関車もイギリス製。イギリスは世界の鉄道発祥の地です。子どもの頃から鉄道が好きな私は、イギリスの鉄道にあこがれがありました。
その思いは、9月26日(火)、ビートルズの名所巡りのために、ロンドン・ユートン(Euston)駅からリバプール・ライムストリート駅(Lime Street, Liverpool)に向かう際、ヴァージン・トレイン(Virgin Train)に乗った時、頂点に達しました。
新幹線を思わせる流線形のフォルム。振り子電車なのでしょう、カーブでもスピードを落とさず、右に左に傾斜させて快走します。280キロメートルほどの距離を2時間あまり。
帰りは9月28日(木)、午後の乗客が少ない時間帯だったので、ファースト・クラス(First Class)に乗り込みました。2列+1列のゆったりとした車内、ファースト専用の乗務員2人が入れ替わり来ては、温かいコーヒーやホットチョコレート、アルコールや冷たい飲み物、ケーキやクッキーなどのリフレッシュメントをひっきりなしに出します。昼食に買ったバーガーキングはいらなかった? 思わず車内で笑みがこぼれます。
もはや飛行機のファースト以上なのでは? 食堂車も消えた日本からすると、うらやましい限りです。しかも、これが1人£49=約6300円でした。行きの普通車(Coach)は夜の乗客が多い時間帯だったこともあり、たしか£78=約1万円でしたので、それより安く乗れたのです。
これは、イギリスの鉄道・長距離バスは、すでに日本でも活発になってきた格安航空(LCC)のようなチケットの販売スタイルになっていて、前日までインターネット予約なら割安で買えるのです。特に、乗客の少ない時間帯では、こうしたファースト・クラスと普通車の逆転現象まで生じるというわけです。
しかし、間を置かずに、イギリスの鉄道の「暗部」も体験しました。
9月29日(土)、カーディフから列車を乗り継ぎ、ロンドン郊外のギルフォード(Guildford)で大学時代の先輩たちと再会、夕食をともにした後、ギルフォード駅から再び電車に乗り、乗り継ぎ駅のレディング(Reading)に向かいました。時刻表上では、乗り継ぎ時間は10分弱。プラットホームは隣接しているので、十分な時間があるはずでした。
しかし、レディング駅のホームに入る目前で赤信号が続き、電車は10分近く立ち往生。別の電車が止まっている同じホームの後方に入り、懸命に隣のホームに走りましたが、カーディフ行き最終列車は走り出していました。ガトウィック国際空港から乗客もたくさんいたのですが、落胆の表情で見送るしかありませんでした。私もなすすべなく、急きょロンドンに行って1泊するしかありませんでした。
ギルフォード~レディング、レディング~カーディフとも、ファースト・ウェスタン(First Western Railway)という同じ会社の列車でした。日本なら、最終電車であることを考えると、車掌が連絡を取り、乗り継ぎ待ち要請を出して、カーディフ行き最終列車はダイヤより遅れても乗り継ぎ客を乗せたうえで発車したはずです。しかし、そういった連携がまるでなく、駅も乗り継ぎ損ねた乗客へのフォローがありませんでした。
このサービスレベルには、首をかしげざるを得ません。
背景には、日本の国鉄民営化に刺激される形で、列車運行と線路保守・運営の「上下分離」方式で民営化したことがありそうです。現に、レディング駅のホームは、複数の鉄道会社が乗り入れており、それがホーム目前の立ち往生につながった可能性も考えてしまいます。
イギリス人も多分に「上下分離」方式に問題を感じているようです。
ロンドンからグラスゴー、マンチェスター、リバプールなどを結ぶウェスト・コースト・メインライン(West Coast Mainline)は日本なら東海道新幹線でしょうが、ヴァージン・トレインが1997年から15年契約で運行してきました。ところが、契約切れを見据えて、政府が昨年、新たな参入を促しました。
応募のあったヴァージンを含む4社を検討した結果、ファースト・ウェスタンを運行するファースト・グループと契約することが固まったが、ヴァージンの反対や署名活動もあり、政府が計画を撤回。ヴァージンとの契約切れも迫り、国会で対応が議論されています。
イギリスのメディアでは、「もう一度、国民のための国鉄に戻せ」といった声も聞かれます。国民にはヴァージン継続の声が多そうですが、なぜファースト・グループへの移行の話が進んだのか、やや不可解です。
半面、ドル箱の東海道新幹線をJR東海が独占的に運行しているよりも、JR他社も交えた定期的な入札で運行会社を決める方が「フェア」な価格競争を呼ぶのか、などとも考えてしまいました。
ウェスト・コースト・メインラインの問題は、ガーディアン紙の記事でご覧ください。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/oct/03/virgin-rail-west-coast