日本も、だいぶん秋らしくなってきたでしょうか。ウェールズは、さらに寒くなってきて、いよいよ最高気温ヒトケタです。寒がりの私は、もうジャンパーも含めて4枚着ています。冬支度、急がないといけないな。
さて、ウェールズに来ると、どうしてもUKとウェールズの関係性を考える機会が増えました。スコットランドの自治政府がスコットランド独立民族党の政権となり、今月、2年後に独立の賛否を問う国民投票を実施することが英国政府との間で合意されたことで、「じゃあ、ウェールズはどうなるの?」と地元民ならずとも考えてしまいます。
10月23日(火)夜、「ウェールズ経済の再建(Rebuilding the Welsh Economy)」という講演がカーディフ大学であったので、行ってきました。12月までの1学期に開催中の「Creative Minds/a festival of ideas」という講演シリーズの一環でした。講師は、マンチェスター大学ビジネススクールのカレル・ウィリアムズ教授(Karel Williams)。写真の立って右を見ている人です。
講演をざくっとまとめると、次のようなことでした。
GDPなどのイギリス全体の経済指標が深刻で、産業も衰退し、国際競争力のある産業は医療、福祉、教育などしか残されていない。中央政府の衰退、大政党の弱体化のうえ、中央省庁もスイング・ボーター(2大政党を支持しない、いわゆる無党派層)に振り回された結果、政治の意思が喪失し、マクロマネジメント(全体のパフォーマンスを考えながらリソースの最適化を図る)が失敗している。これまでのような構造改革や起業、中道左派的産業政策、ニューセクターもうまくいかない。
なんか、どこかの国の話にも聞こえてきますね。
こうした現状を踏まえ、スコットランドなどのケルト民族主義的な独立運動とは一線を画し、中央政府からの予算や権限委譲も期待しないうえで、考えうるのは「ゲリラ的な経済発展」の薦めだ。
具体的には、地域ネットワーク、非営利、国を支える税収源を考えながら、一体化・ネットワーク化された供給、地域内の金融循環、基盤投資、地域インフラ、年金基金の活用などを進める。それが動き出すかどうかは、中産階級の経済的な創造がカギを握っている。
そんな内容でしたが、やはりバブル経済が崩壊して輸出不振になった1990年代の日本で、政治家も有識者も「内需拡大しかない」とお題目のように言っていたのと重なりました。個人的には、今の日本と比べても、イギリスは第2次産業がふるわなくなり、ヴァージングループ以外はイノベーションが感じられるサービス業もあまりないので、第3次産業の奮起を期待したいところです。
もう一つは、10月18日(木)~21日(日)は、ウェールズの新進気鋭のミュージシャンを後押しするロックフェス「swn Festival 2012」が、カーディフ一帯で開かれたのですが、関連のシンポジウムも興味深いものでした。
趣旨が趣旨ですので、ミュージシャンや音楽産業関係者向けの資金調達や起業、デジタルでの発信、マネージャー業のノウハウをテーマにしたものもあったのですが、19日(金)の授業後にのぞいたのは、ウェールズの音楽著作権使用料をめぐる問題がテーマでした。
討論はすべてウェールズ語ということに驚きましたが、英語の同時通訳があり、ヘッドセットを使って懸命に耳を傾けました。
議論を整理すると、日本のJASRAC(日本音楽著作権協会)にあたるPRSという組織が音楽著作権使用料の徴収を行っています。テレビやラジオの放送で使用された楽曲の著作権使用料の引き上げを訴え、PRSや、地元ラジオの「BBCウェールズ(英語放送)」や「BBC CYMRU(ウェールズ語放送)」を運営するBBCと5年間にわたり交渉しているのですが、折り合いがついていない、というのです。
ウェールズの音楽家団体の調べでは、BBCは、詩の朗読1分間あたり38ポンドが払ったのに対し、音楽1分間あたり49ペンスしか払われていない、としています。限られたデータを使った彼らの計算では、収入の83%が損なわれたということです。このため、音楽も1分間あたり20ポンドまで引き上げるべきだと主張しているそうですが、差の開きが大きすぎて好転していません。
また、BBCの英語以外の放送についての取り決めがないため、英語放送とウェールズ語放送で重複して使われても1曲とカウントされていることでも損害を被っている、と主張していました。聴衆、そして音楽家の生活を守るため、ウェールズの230の作曲家がBBCと交渉していますが、折り合いはついていません。
こうしたことから、ウェールズの音楽家団体は、放送の著作権使用料についてはPRCから離脱し、2013年1月から独自に徴収することを決めているが、その組織の準備もこれから、ということです。
BBCは、すでにテレビ・ラジオのオンデマンドのストリーミングによる番組視聴を無料で展開していますが、さらに、人気の音楽配信サービス「Sportfy」に対抗する形で、11月にも独自の音楽配信システムを始める、と報道されるなど、放送の枠を超えて音楽利用を拡大する勢いです。音楽著作権使用料に関しては旧態依然、ということでしょうか。
CDなどのソフトが以前のように売れず、フリー(無料)に向かう中で、放送の音楽著作権使用料の比重は大きくなるばかりですが、交渉当事者が三つどもえになっては、ことはややこしくなるばかりでしょうね。
さて、ウェールズに来ると、どうしてもUKとウェールズの関係性を考える機会が増えました。スコットランドの自治政府がスコットランド独立民族党の政権となり、今月、2年後に独立の賛否を問う国民投票を実施することが英国政府との間で合意されたことで、「じゃあ、ウェールズはどうなるの?」と地元民ならずとも考えてしまいます。
10月23日(火)夜、「ウェールズ経済の再建(Rebuilding the Welsh Economy)」という講演がカーディフ大学であったので、行ってきました。12月までの1学期に開催中の「Creative Minds/a festival of ideas」という講演シリーズの一環でした。講師は、マンチェスター大学ビジネススクールのカレル・ウィリアムズ教授(Karel Williams)。写真の立って右を見ている人です。
講演をざくっとまとめると、次のようなことでした。
GDPなどのイギリス全体の経済指標が深刻で、産業も衰退し、国際競争力のある産業は医療、福祉、教育などしか残されていない。中央政府の衰退、大政党の弱体化のうえ、中央省庁もスイング・ボーター(2大政党を支持しない、いわゆる無党派層)に振り回された結果、政治の意思が喪失し、マクロマネジメント(全体のパフォーマンスを考えながらリソースの最適化を図る)が失敗している。これまでのような構造改革や起業、中道左派的産業政策、ニューセクターもうまくいかない。
なんか、どこかの国の話にも聞こえてきますね。
こうした現状を踏まえ、スコットランドなどのケルト民族主義的な独立運動とは一線を画し、中央政府からの予算や権限委譲も期待しないうえで、考えうるのは「ゲリラ的な経済発展」の薦めだ。
具体的には、地域ネットワーク、非営利、国を支える税収源を考えながら、一体化・ネットワーク化された供給、地域内の金融循環、基盤投資、地域インフラ、年金基金の活用などを進める。それが動き出すかどうかは、中産階級の経済的な創造がカギを握っている。
そんな内容でしたが、やはりバブル経済が崩壊して輸出不振になった1990年代の日本で、政治家も有識者も「内需拡大しかない」とお題目のように言っていたのと重なりました。個人的には、今の日本と比べても、イギリスは第2次産業がふるわなくなり、ヴァージングループ以外はイノベーションが感じられるサービス業もあまりないので、第3次産業の奮起を期待したいところです。
もう一つは、10月18日(木)~21日(日)は、ウェールズの新進気鋭のミュージシャンを後押しするロックフェス「swn Festival 2012」が、カーディフ一帯で開かれたのですが、関連のシンポジウムも興味深いものでした。
趣旨が趣旨ですので、ミュージシャンや音楽産業関係者向けの資金調達や起業、デジタルでの発信、マネージャー業のノウハウをテーマにしたものもあったのですが、19日(金)の授業後にのぞいたのは、ウェールズの音楽著作権使用料をめぐる問題がテーマでした。
討論はすべてウェールズ語ということに驚きましたが、英語の同時通訳があり、ヘッドセットを使って懸命に耳を傾けました。
議論を整理すると、日本のJASRAC(日本音楽著作権協会)にあたるPRSという組織が音楽著作権使用料の徴収を行っています。テレビやラジオの放送で使用された楽曲の著作権使用料の引き上げを訴え、PRSや、地元ラジオの「BBCウェールズ(英語放送)」や「BBC CYMRU(ウェールズ語放送)」を運営するBBCと5年間にわたり交渉しているのですが、折り合いがついていない、というのです。
ウェールズの音楽家団体の調べでは、BBCは、詩の朗読1分間あたり38ポンドが払ったのに対し、音楽1分間あたり49ペンスしか払われていない、としています。限られたデータを使った彼らの計算では、収入の83%が損なわれたということです。このため、音楽も1分間あたり20ポンドまで引き上げるべきだと主張しているそうですが、差の開きが大きすぎて好転していません。
また、BBCの英語以外の放送についての取り決めがないため、英語放送とウェールズ語放送で重複して使われても1曲とカウントされていることでも損害を被っている、と主張していました。聴衆、そして音楽家の生活を守るため、ウェールズの230の作曲家がBBCと交渉していますが、折り合いはついていません。
こうしたことから、ウェールズの音楽家団体は、放送の著作権使用料についてはPRCから離脱し、2013年1月から独自に徴収することを決めているが、その組織の準備もこれから、ということです。
BBCは、すでにテレビ・ラジオのオンデマンドのストリーミングによる番組視聴を無料で展開していますが、さらに、人気の音楽配信サービス「Sportfy」に対抗する形で、11月にも独自の音楽配信システムを始める、と報道されるなど、放送の枠を超えて音楽利用を拡大する勢いです。音楽著作権使用料に関しては旧態依然、ということでしょうか。
CDなどのソフトが以前のように売れず、フリー(無料)に向かう中で、放送の音楽著作権使用料の比重は大きくなるばかりですが、交渉当事者が三つどもえになっては、ことはややこしくなるばかりでしょうね。