今年、キアヌさん主演の「ジョン・ウィック パラベラム」が公開されました。ところどころに松田優作さんの遺作になった「ブラックレイン」へのオマージュを感じて、見にいきたくなっているところに、午前十時の映画祭を調べると、11月23日~12月21日まで上映となっているではありませんか!!。
 
12月17日、久しぶりに鑑賞しました。
 
 
 初めて見たのは30数年前。当時は、高倉健さんとその前年になくなった松田優作さんのこと、大阪がロケ地になっているところに目がくらんで、作品の本質まで辿りつけませんでした。
 
が、
 
改めて見て、制作企画のマイケル・ダクラスとリドリー・スコット監督の慧眼にびっくりするばかりです。アメリカのように完全封鎖や長時間場所を確保できない日本での撮影にリドリー・スコット監督は「日本で2度と撮影しない」と言っていたそうです。この作品が、日本でフィルム・コミッションがたちあがったきっかけだと言われています。
 
当時、いろいろなトラブルで本来の場所から撮影場所を変えたことも多かったそうで、この十三の栄町商店街なんか当初撮影の予定になかったそうです。が、結果的にそれはよかったようで、いろいろなビジュアルに使われています。
 
 

ヒヨコ解説:

ニューヨーク市警の刑事ニックとチャーリーはヤクザの佐藤を逮捕し、日本に連行する。しかし目的地の大阪に到着するなり、佐藤が仲間の手によって逃亡。言葉も通じない国で困惑しながらも、ニックとチャーリーは佐藤の追跡に乗り出す。そんなふたりを監視するベテランの松本警部補。やがてチャーリーが佐藤に惨殺されるという事態に。復讐に燃えるニックは松本とともに佐藤を追う。日米の刑事の友情、そしてその激闘を描くサスペンスアクション。これが遺作となった松田優作も強烈な印象を残す。

1989年製作/125分/アメリカ
原題:Black Rain
配給:UIP
劇場公開日:1989年10月7日

出典:映画.com

 

ヒヨコキャスト

監督

 リドリー・スコット
製作
 スタンリー・R・ジャッフェ シェリー・ランシング
製作総指揮
 クレイグ・ボロティン ジュリー・カーカム
脚本
 クレイグ・ボロティン ウォーレン・ルイス
撮影
 ヤン・デ・ボン
美術
 ノリス・スペンサー
衣装
 エレン・マイロニック
編集
 トム・ロルフ
音楽
 ハンス・ジマー

■キャスト
ニック・コンクリン:マイケル・ダグラス
チャーリー・ビンセント:アンディ・ガルシア
松本正博:高倉健
ジョイス:ケイト・キャプショー
佐藤浩史:松田優作
菅井:若山富三郎
大橋:神山繁
オリバー:ジョン・スペンサー

出典:映画.com

 

ヒヨコ感想

テレビ朝日系「日曜洋画劇場」(日曜午後9時)で放映されたとき、映画評論家の故淀川長治さん(享年89)の解説で、佐藤の上司、組長の菅井の言葉を取り上げていたのが印象的でした。

 

Sugai: [on Sato] He might as well be an American. His kind respect just one thing: money.


Nick Conklin: So what are you into it for? Love?
 

Sugai: I was 10 when the B-29 came. My family lived underground for three days. When we came up the city was gone. Then the heat brought rain. Black rain. You made the rain black, and shoved your values down our throat. We forgot who we were. You created Sato and thousands like him. I'm paying you back.

 

(解釈)

菅井:彼はアメリカ人のようになっている、彼がリスペクトするのは金だけだ。

 

ニック:だったら、お前は何にかけるんだ?愛か?

 

菅井「俺が10歳の頃、B29がやってきて、家族で防空壕に3日間こもっていた。防空壕から出たら、町はなくなっていた。そして、その熱は黒い雨を降らせた。アメリカが黒い雨を作った。そして、君たちの価値観を俺達に飲み込ませた。俺たちは自分自身を忘れた。てめえらが佐藤のような奴らを作ったんだ。今、そのツケを払っているんだ」

 

ーーー

 この映画の「ブラックレイン」はアメリカから来た拝金主義の価値観のことを指していたんですね。10代の頃はこの拝金主義の価値観にどっぷりつかっていたから、菅井のセリフの意味するところは当時しっくりきませんでした。

 

この菅井のセリフの前に高倉健さん演じる松本警部補とのセリフがニックへの最初の軽いジャブになっています。

 

Matsumoto Masahiro: Perhaps you should think less of yourself and more of your group, try to work like in Japanese. I grew up with your soldiers; you were wise then. Now - music and movies are all America is good for. We make the machines, we build the future, we won the peace.


Nick Conklin: And if there was *one* of you guys who had an original idea, you'd be so tight that you couldn't even pull it out of your ass!

 

 当時の日本的な考えとして、松本は「自分が属する集団のことも考えて行動したほうがよい。アメリカの映画や音楽はすばらしいけれども、俺たちは未来をつくり、平和をかちとるために機械を作っているんだ」と説得するのに対して、ニックはスラング交じりに「日本では新しい考えをもっていても、日の目をみないじゃないか」みたいなことをいうわけですね。

 

 ニックはNYの悪徳警官みたいなことをやっていて、麻薬売り上げ金の横領疑惑がもたれている。(実は実際やっていた)そういうヤクザなニックが四角四面の松本と組んで佐藤を逮捕するという物語になっています。どうしようもない刑事のニックですが、チャーリーを失い、松本と行動することで、だんだん感化されていくんですね。逆に松本も、組織のヒエラルキーに縛られない自己を見出していく。

 

 当時、高倉健さんは渋い役が多かったから、ハリウッド映画の中で多少混乱気味な感じがしていました。ですが、先入観なしにこの映画を見て、それは松本警部補の役柄だったのかと改めて思った次第です。

 

 また、ひときわ異彩を放っているのは、松田優作さんが演じる佐藤。菅井が言う拝金主義の個人主義者。でも、この映画が制作されてから30数年後の今、佐藤のような犯罪者が増えましたよね。

 

 今、欧米が引き起こした数々の戦争とエンターテイメントを経て、「黒い雨」は今、世界中を覆っています。アメリカが発信するエンターテイメントの「夢」や「願い」は、本来の在り方からはずれているのかなと思うこの頃です。

 

 

 

メモご参考

右矢印Black Rain (1989) - IMDb

右矢印Black Rain (1989 American film) - Wikipedia

右矢印ブラック・レイン - Wikipedia

右矢印午前十時の映画祭13 デジタルで甦る永遠の名作 (eiga.com)

右矢印ロケ地について

  


 

 

 


 

余談ですが、映画の中で懐かしかったのは2010年くらいまでアメリカと日本の間を就航していたノースウエスト航空。一度エンジントラブルを経験しましたが、あのグレーの機体が懐かしかった~。

 

 

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