2023年4月30日
東京国立近代美術館70周年記念展で狩野芳崖の「悲母観音」が公開されたので、再び東京国立近代美術館 「重要文化財の秘密」に行ってきました。
■前回のレポート
雨天の天気予報で、時間も1時間早めたせいかもしれませんが、前回よりもさらに人が多くなった感じでした。今回はこの後の予定がなかったので、前回あまりよく見ることができていなかった部分を見て、収蔵コレクション展「MOMATコレクション」展も鑑賞することができました。でも、1時間くらいのつもりが、やっぱり2時間かかりました。
狩野芳崖「悲母観音」
東京藝術大学蔵
光の環の中の嬰児。観音様は嬰児を迎えいれているのか、はたまた現世に送り出しているのか。生まれる命への愛情を感じます。
嬰児を拡大した写真をReminiで処理したら、筆のあとが浮かび上がりました。
狩野芳崖の絶筆。これを完成させた4日後に亡くなったそうです。伝統ある狩野派の日本画家でありながら、明治維新後、西洋の絵の具や遠近法をとりいれています。どれだけの試行錯誤があったのでしょうか。
生で見ることができて感動。でもですね、写真に撮ると、アクリル板の向こうなので、どうしても光(白い点は館内の照明)や像が映りこんでしまいます。距離をあけると人が入ってしまうし…。 脳裏にこの肉筆の素晴らしさをたたきこみます。
初代宮川香山 褐釉蟹貼付台付鉢
東京国立博物館蔵
この本物そっくりの蟹…ですが、文化遺産オンラインによると、
「鉢の体部正面には大小二匹のほぼ実物大に作り出した渡り蟹を連なって貼り付け、褐・黒・青・紫などの上絵具で賦彩する」のだそうです。本物だと勘違いしている鑑賞者がいました。そういう人がいるというのもびっくりでしたが…。
出典:褐釉蟹貼付台付鉢〈宮川香山作/〉 文化遺産オンライン (nii.ac.jp)
右側の花瓶について
初代宮川香山 黄釉銹絵梅樹図大瓶
東京国立博物館蔵
「作者の初代宮川香山は、江戸時代の終わりに京都に生まれ、明治時代になると横浜で海外に向けて陶磁器を盛んに作りました。この作品は、明治26年(1893年)にアメリカで開催された、シカゴ・コロンブス世界博覧会に出品されたもので、その端正な形や高度な釉薬の技法は、当時欧米で流行していた中国のやきものの影響を強く受けています。香山の巧みな技術によって生み出されたこの格調高い花瓶は、世界の人々を魅了したのです。」
出典:黄釉銹絵梅樹図大瓶 文化遺産オンライン (nii.ac.jp)
また、音声ガイドでは19世紀末から流行が始まり、「褐釉蟹貼付台付鉢」のようなものはあまり売れなくなったそうです。次に出てきたのはこの花瓶だそうです。
そして、究極のシンプルがこれです。
三代清風与平「白磁蝶牡丹浮文大瓶」
東京国立博物館蔵
「全体の色は、柔らかさを感じさせる白一色で洗練された印象を与えます。胴には六輪の牡丹がぐるりと囲むように配置され、肩の部分は大きな余白に五頭の蝶が飛んでいます。これらの文様は、胴の土を盛り上げたり彫り込んだりしながら浮き出すようにあらわし、葉脈などの細かい部分は線で彫り出しています。作者の三代清風与平(せいふうよへい)は、幕末から明治時代の人で、京都の陶工の清風家に養子に入り、明治11年(1878年)には三代目の名を継ぎました。与平は中国の陶磁器に大きな影響を受け、その表現にならいつつ多くの新しい技法を生み出して独自の表現をみせるようになりました。この瓶も、中国・清時代の磁器を参考にしたとみられますが、柔らかみのある白い色調と優しく浮き上がる文様は与平独自の表現で余韻を感じさせます。」
出典:白磁蝶牡丹浮文大瓶 文化遺産オンライン (nii.ac.jp)
蝶や牡丹の花がくっきりはっきり彫られているのに自己主張がなく、透明感にあふれています。隣で見ていた若い女性たちが「これはどうやって焼いたんだろう。裏側も見たいね」なんて話していました。
高村光雲「老猿」
東京国立博物館蔵
「左手には鷲の羽を握りしめ、右手上方を見据えて岩上にすわる大猿の像。」だそうです。
猿の視線の先には鷹や鷲がいます。
鈴木長吉の「十二の鷹」
東京国立博物館蔵
鈴木長𠮷「鷲置物」
東京国立博物館蔵
以下は収蔵コレクション展「MOMATコレクション」展の比較です。
岸田劉生「麗子微笑」
東京国立博物館
収蔵コレクション展「MOMATコレクション」展より
岸田劉生「麗子五歳之像」
藤島武二「天平の面影」
石橋財団アーティゾン美術館蔵
収蔵コレクション展「MOMATコレクション」展より
藤島武二「東洋憧憬」
東京国立近代美術館蔵
新海竹太郎「ゆあみ」
東京国立近代美術館蔵
収蔵コレクション展「MOMATコレクション」展を見ると、ブロンズ像があります。
新海竹太郎「ゆあみ」ブロンズ
東京国立近代美術館蔵
説明を見て納得。重要文化財になっているのは、石膏原型のほうなんですね。ブロンズのほうが生々しい感じがします…。
参考URL
「重要文化財の秘密」 問題作が傑作になるまで 公式ウェブサイト (jubun2023.jp)