【映画】「燃ゆる女の肖像」#ネタバレ感想 #中野京子氏のコメント望む | いろいろといろ

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今日は18世紀 フランス革命前夜を舞台にして映画「燃える女の肖像」を鑑賞してきました。

 

■オフィシャルサイト

映画『燃ゆる女の肖像』 公式サイト (gaga.ne.jp)

 

 

■予告編

 

■映画概要

18世紀フランスを舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家の鮮烈な恋を描き、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞したラブストーリー。画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から娘エロイーズの見合いのための肖像画を依頼され、孤島に建つ屋敷を訪れる。エロイーズは結婚を嫌がっているため、マリアンヌは正体を隠して彼女に近づき密かに肖像画を完成させるが、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを批判されてしまう。描き直すと決めたマリアンヌに、エロイーズは意外にもモデルになると申し出る。キャンパスをはさんで見つめ合い、美しい島をともに散策し、音楽や文学について語り合ううちに、激しい恋に落ちていく2人だったが……。「水の中のつぼみ」のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけ、エロイーズを「午後8時の訪問者」のアデル・エネル、マリアンヌを「不実な女と官能詩人」のノエミ・メルランが演じた。

2019年製作/122分/PG12/フランス
原題:Portrait de la jeune fille en feu
配給:ギャガ

出典:映画.com


■Cast:
    Noémie Merlant    ...    Marianne
    Adèle Haenel    ...    Héloïse
    Luàna Bajrami    ...    Sophie
    Valeria Golino    ...    La Comtesse
     

 

■感想

 

 

1.監督のこだわり

■美術

この映画はオフィシャルサイトにもあるように古典的な技法にこだわって制作されたということです。具体的には古典的な画法に精通しているエレーヌ・デルメールという画家を見つけました。撮影監督のクレア・マトンは、エレーヌ・デルメールが実際に絵画を制作する様々な段階を、すべて連続で撮影したそうです。

出典:IMDB

 

■想像ですが…。

今回主要な登場人物は画家マリアンヌ、伯爵夫人、その娘のエロイーズ(なんと当時を席巻したルソーの小説の主人公…)、小間使いの娘ソフィーの4人。その中でこのソフィーがラストに行くにつれて存在感を持ちます。

 

 

この感じどこかで見たことがあると思ったら、グルーズの「壊れた甕」の女の子。

 

 

「はじめてのルーヴル」で中野京子さんが解説されていますが、この女の子、無理やり関係を持たされてしまったんですね。壊れた甕は彼女の子宮を示唆しているそうです。また、この絵画を描かせたのはルイ15世の愛妾、デュ・バリー夫人とか。

 

 

もしやと思ったら、やっぱり甕をこわされてしまいました。ところで、マリアンヌにソフィーが打ち明けるとき、当時の女性が腹痛にやっていた処方が紹介されています。さくらんぼの種を50個くらいあつめてローストした後、布にくるんで生理痛に悩むマリアンヌに渡していました。当時は今よりも苦労していたみたい…。(こういうネタ好き)

 

伯爵夫人が留守の最中に堕胎しなければということで、伯爵夫人の娘、マリアンヌは彼女といっしょに村に出て、堕胎に立ち会うのですが、当時の女性の選択肢のなさには涙が出そうでした。

 

村に下りたときに参加したときに合唱する声に心を奪われて、お祀りの焚火がドレスに燃え移ったのも気づかなかったエロイーズが今回の映画の象徴になっています。

 

(C)Lilies Films.

 

 

また、なぜ主人公が女流画家だったのか、オフィシャルサイトに監督のこんな言葉が残されています。

 

(引用ここから)

実際は100名ほどの女性画家が成功をおさめ、その作品の多くは有名美術館の所蔵品となっているものの、歴史に書き手の名は残っていない。シアマ監督は、「美術史が女性を見えざる存在にしてきたのです。この忘れ去られた女性画家たちの作品を発見した時、とても興奮しましたが、同時に悲しみも感じました。完全なる匿名性を運命づけられた作品に対する悲しみです。彼女たちの作品に、私の人生に欠けていたものを見つけ、心がかき乱され、深い感動を覚えました」と語る。

(引用ここまで)

出典:映画『燃ゆる女の肖像』 公式サイト (gaga.ne.jp)

 

 

中野京子さんがこの映画をどんな紹介をされるか、ぜひお話を聞きたかったです。

 

■音楽

この映画に出てくる音楽は2曲だけ。どちらも大事なファクターです。

 

Concerto No. 2 for violin in G minor, Op. 8, RV 315, L'Estate
ヴィヴァルディ協奏曲第2番ト短調 RV 315「夏」

Composed by Antonio Vivaldi
Performed by La Serenissima, Adrian Chandler (director/violin)

 

※一番、映画の緊張感に近かった動画です。

出会ったときに「何か音楽は」とエロイーズがマリアンヌに聞いた最、マリアンヌが聞きかじったこの曲を部屋にあったチェンバロで引いて、少し関係がほぐれます。

 

そして、夏が終わった数年後、音楽ホールの向かい合ったBOX席で二人は遠目に再会するのですが、凝視するマリアンヌとはうらはらにエロイーズは全く目を合わせません。そして、この曲が流れエロイーズの表情にフォーカスして終わります。

 

 

音譜Portrait de la jeune fille en feu
(Bande originale du film)
Para One, Arthur Simonini

 

 

ブルゴーニュ地方はイギリスに近い半島。今回映画を見て調べたら、フランスの中でケルト文化が残る地方だそうです。(ケルトといえばアーサー王伝説)楽曲の非常に印象深い歌詞は、シアマ監督がニーチェの詩から引用した歌詞を、ラテン語で書き起こしたのだそうです。上記のチャンネルもシアマ監督のものです。

 

■小説

出典:IMDB

 

 

エロイーズとの別れ後の最初の再会は肖像画。意味深な小説はギリシャ神話のオルフェウス。小間使いのソフィーは「なぜオルフェウスが振り返ったのかがわからない」と強くオルフェウスを非難するんですが、マリアンヌは「夫ではなく、詩人だったから、振り向いたのよ」と諭します。後年、マリアンヌは別れのシーンを展覧会に父の名で展示します。

 

その絵はエロイーズとの最後の別れを彷彿とさせます。

出典:IMDB

 

 2.印象

女の園でいろいろな運命が寄り合わさってまぶしい思い出を紡いだのも束の間、片や職業婦人として成功し、片や誰かの所有物(どんなに高貴であっても)として堕ちていくんです。

 

 

出典:IMDB

 

伯爵夫人がいない間の二人の秘密の絆。この絆の面がクローズアップされてしまっていますが、脚本としては歴史の中に隠された女性たちの煌めく一瞬を写し取りたかったのかなと思いました。

 

 

日本では今年の東京国際映画祭で紹介。韓国では昨年11月7日~13日にソウル国際プライドフィルムフェスティバルで紹介されていました。

 

 

レオさん見たかな…。

 

■参考リンク

映画『燃ゆる女の肖像』 公式サイト (gaga.ne.jp)

Portrait of a Lady on Fire (2019) - IMDb

【「燃ゆる女の肖像」評論】絵画のように美しい、官能的な「視線の物語」が、豊かな余韻をもたらす : 映画ニュース - 映画.com (eiga.com)

カンヌで絶賛の愛の映画「燃ゆる女の肖像」監督、元恋人を主演に「彼女に新しい楽譜を与えたかった」 : 映画ニュース - 映画.com (eiga.com)

 

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