【映画】悪の偶像 #ハン・ソッキュ | いろいろといろ

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2000年に公開された「シュリ」で、ハン・ソッキュさんのファンになってから、彼が出演している映画はなるべく見るようにしています。今の私が、1999年東京にいたら、東京国際映画祭のハン・ソッキュさんの舞台挨拶にきっと行っていたと思います。1999年は「マトリックス」と「エロイカより愛をこめて」に夢中だったので、仕方がないですね。この「シュリ」を知ったのも、「エロイカより愛をこめて」の原作者 青池保子先生の掲示板でした(遠い思い出)。

 

さて、ハン・ソッキュさんの最新作「悪の偶像」が公開。

 

■韓国では昨年3月に公開

 

1・キャスト

■市議会議員ク・ミョンフェ(ハン・ソッキュ)

息子のヨハンが彼の車を持ち出してひき逃げ。その後、ミョンフェがとった行動は…。

 

■金髪の工具店主ユ・ジュンシク(ソル・ギョング)

ヨハンにひき逃げされたのは彼の息子プナン。

彼はプナンの嫁がそばにいたはずだと言い張る。

 

■プナンの嫁、リョナ(チョン・ウヒ)

中国の延辺出身だが、なぜかハルピン出身と偽る。

彼女の姉は「妹を探してはいけない。あの子は怪物」とやけどの跡をみせる。

 

2.オフィシャルサイト

https://akuno-guzo.com/

 

3.概要

出典:映画.com

 

 

 

(抜粋)

「シュリ」「ベルリンファイル」のハン・ソッキュ、「オアシス」「殺人者の記憶法」のソル・ギョングという韓国映画界を代表する2人の実力派俳優が共演し、ひき逃げ事件の加害者の父と被害者の父の運命が交錯するさまを描いたサスペンスノワール。息子のヨハンが飲酒運転で人をひき殺してしまったことを知った市議会議員のミョンヒは、事件をもみ消そうとする。しかし、現場に居合わせた被害者の新妻リョナの行方がわからなくなっていることが判明。事実が明るみに出ることを恐れるミョンヒは、リョナの行方を追う。一方、被害者の父親であるジュンシクは、リョナが妊娠していることを知り、なんとかして彼女を捜し出そうとする。それぞれのルートでリョナを追うミョンヒとジュンシクだったが……。監督・脚本は「ハン・ゴンジュ 17歳の涙」のイ・スジン。

(抜粋ここまで)

 

■感想

 

ここからネタバレ感想です。

 

7月10日 ソウル市長が逝去しましたが、その原因がいろいろ取りざたされています。ダークな政界をこの映画がえぐっているようなそんな感じがしました。

 

考えてみたら、私が「シュリ」を見て惹かれたのは、金大中大統領が政権をとっているとき。その頃は、わりあい、スパッとしたわかりやすい映画が多かったのですが、以降、いろいろ暗喩が多い映画が多くなり、この「悪の偶像」はいろいろと意味深です。

 

まずは原題の意味idolとは、

「偶像、聖像、偶像神、邪神、偶像視される人、崇拝物、アイドル、誤った認識、謬見(びゆうけん)、イドラ」

 

この映画はあんまり売れないだろうと見越して、あんまりリキが入っていない紹介でしたが、デビッド・リンチ監督の「ブルー・ベルベット」や「ロスト・ハイウェイ」が好きな人なら、きっとハマると思います。もし「映画秘宝」が休刊していなくて、あの雑誌がこの映画を取り上げたら、どんな風に語るでしょうか…。

 

 

 

 


 

嘘をついているのは誰か

 

※出典:「ミステリと言う勿れ」 たぶん7巻

 

最初は、嘘をついているのはミョンフェ議員だけだと思っていたんです。そうしたら、ほとんどの人が嘘つきでした。

まず、冒頭のモノローグ

 

「息子の射精は俺がやった。

俺が生きている間、息子を手伝ってやれなかったのが心残りだ」

 

このモノローグはミョンフェ議員だと思ってしまいました。

 

ミョンフェ議員の息子ヨハンとその妻

 ひき逃げしたと言っていたけど、被害者をトランクに載せて、自宅まで連れ帰っていました。そして、その彼を殺したのは、議員の妻(ストーリーでは息子となっていますが、誤り)。

 

ミョンフェ議員

 上記のなりゆきで、ひき逃げだけだったことを偽装

 

目撃者

 黒いクルマがひき逃げしたと偽証。さらにひき逃げの現場にヨハンの嫁と男がいたことを証言。その男はなんとユ・ジュンシュクだという。

 

リョナ

 中国の誰かに借金をして韓国に入ってきた。延辺出身をハルピン出身と出身を偽っている。結婚して韓国に永住することを目論む。中国ではやばいことをしたようで、付け狙われている。ヨハンの息子を妊娠。

 

ユ・ジュンシュク

 息子を殺されてミョンフェ議員を責めるが、なぜか嫁のリョナにこだわる。 息子の嫁のリョナが強制送還されないようにミョンフェ議員がとりはからったことで、ミョンフェ議員の選挙のサポーターに。そこで、実は息子のヨハンが知的障害があり、射精の手伝いをずっとしていたが、パイプカットをさせたことを告白。

 

そうなんです。

 

冒頭のモノローグはこの人。ミョンフェ議員だとすっかり騙されてました。

 

そして、

 

一番の大ウソツキはこのユ・ジュンシュクさんだったんです。この方、知的障害のある息子にリョナを嫁として引き合わせたんですが、息子の代わりに関係を持っていて、妊娠させていたんです…。

 

#上の目撃者の証言では彼がひき逃げの現場にいたということだから、もしかすると、息子を道路に突き落としたのは、もしかしてユ・ジュンシュク?(ここは観客の想像に任されています)

 

 挙句の果てには、リョナと籍を入れようとします。けれどもリョナが流産して逃げたのを知ると、なんとミョンフェの選挙当日、16世紀、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、日本軍を打ち負かした救国の英雄、反日の象徴である李舜臣の像の首を討ちとるんです。

 

■銅像がある光化門駅。

参考:李舜臣

 

 

 

 

リョナはリョナで、凶悪な過去を持っています。少し気に入らないことがあると、姉にやけどを負わせ、最終的には殺害し、中国から来た追手すらも殺してしまいます。そして、彼女を監禁したのがミョンフェ議員だということを香水で察知し、ミョンフェ議員を殺害しようと家に向かいます。

自宅には、妻がしばられて、リョナがガス栓を開けて火をつけます。そして、大爆発…。

 

 

いろいろなシガラミがなくなったミョンフェ議員は、中国にわたって、また発起を図ります…。

#冒頭で中国の病院関係の仕事についていたと伏線あり。

 

このイメージはラストシーン

中国語で演説する彼の横顔のやけど跡をアップで映しながら、背後から引きで撮影。登場人物の中で最後に勝ち残った「精錬な被害者」です。

 

 

じゃあ、誰がほんとうのことを言っていたのか。

 

出典:「ミステリと言う勿れ」たぶん7巻

 

ミョンフェ議員の認知症の父そして母。

 ミョンフェ議員の母はリョナがハルピン出身ではなく、延辺出身だと見抜き、その結果殺されてしまいます。自分の身元を守るためとはいえ、自分の姉もミョンフェ議員の母も殺害した理由が知りたくて、延辺を調べてみました。

 

★延辺事件

 延辺朝鮮族自治州(えんぺんちょうせんぞくじちしゅう)は、中国吉林省にある朝鮮族の自治州。北朝鮮の工作員が中国東北三省に入り込んで60名以上逮捕された事件があった。

 

…意味深です…

この映画以前のリョナさんの行動も

映画化できそうです。

 

数秒も見逃せない、無駄がない作りの映画でした。

ただ、このスカッとしないのは、世相を反映しているのか、いろいろな警告を発しているように思いました。

 

 


 

ところで

ソウルの自殺した市長も

この映画を見たのでしょうか。

 

出典:「ミステリと言う勿れ」たぶん7巻

 

「社会的に殺す」ことをやってきた市長には、「社会的に殺される選択肢」もできてしまっていたのかもしれません。

 

■過去ブログ記事

【時事】セクハラ訴訟と遺言書 #伊丹十三 と #朴ソウル市長

 

 

 

 

 

■参考リンク

【IMDB】Woosang

韓美生活

【RealSound】『悪の偶像』は韓国ノワールの進化型!?