真夏の方程式Ⅰ
いよいよ6月である。
空を見上げれば、いつ梅雨入りしてもおかしくない雲行き。だが、アラ還ライダーにとって、この時期に本当に頭を悩ませるのは――夏のライディングウェアだった。
本音を言えば、TシャツにGパンで風を浴びながら走りたい。
だが、昨年11月の転倒事故で、こぶしのナックル、肘、肩を痛めた身としては、そうもいかない。
ちなみに膝だけは無傷だった。外付けのニーパッドを付けていたおかげである。
あの時ほど、「備えあれば憂いなし」という言葉を実感したことはない。

「夏でも涼しくて、ちゃんと守ってくれて、それでいて安い……。そんな都合のいいウェア、あるのかねぇ」
ソファでスマホを眺めながら、俺は独りごちた。
すると背後から、くすっと笑う声がした。
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