未来を語る視点
沈黙の中、所長の視線は一点を見つめたまま動かない。
応接室を満たすのは、時計の針が刻む音だけ。
――このままでは終わる。
だが引き下がれば、今回のフォーラムは骨抜きになる。
俺は深く息を吸い、言葉を選ばずに切り込んだ。
「……所長」
湯浅の眉がぴくりと動く。
「確かに、技術的取り組みには機微があるでしょう。だが――今回、私どもがお願いしたいのは、御社の“技術”そのものではない」
「……?」
「必要なのは“未来を語る視点”です。水素を使ったゼロエミッション火力発電――それが社会をどう変えるのか。人々の暮らしに、どんな希望を与えるのか。それを語れるのは、開発の最前線に立つ御社以外にありません」
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