ある一人の人物
俺は続けた。
「所長、我々がやろうとしているのは単なるイベントではありません。経産省や自治体が“もう一度旗を掲げたい”と考えている。だからこそ必要なのは、御社のような現場の声なのです」

湯浅所長の眼光が鋭くなる。
まるで心の奥を見透かすような視線だった。
「……山本さん」
低い声が響いた。
「あなたは、私に“技術”ではなく“未来”を語れ、と言うのですね」
「はい」
俺は一歩も引かず、頷いた。
短い間。
だが永遠のように感じられる沈黙が落ちた。
やがて――所長の口元が、かすかに緩んだ。
「……面白い」
その言葉が放たれた瞬間、応接室の空気が変わった。
湯浅所長は、ある一人の人物の名前を俺たちに伝えた。
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