地域戦略部には戦略が無い(166)海の経済と、つながらない糸 | cb650r-eのブログ

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海の経済と、つながらない糸

 

さて、お次は「ながさきオーシャン・エコノミー」の調査である。

天野はデスクの上に一枚の名刺を置き、その文字を目で追いながら携帯電話をかけていた。

 

「はい、ながさき地域戦略研究所です」

 

「大阪ビジネスコンサルタントの天野と申しますが、亀田主任調査役はいらっしゃいますか?」

 

「あいにく、亀田は今週いっぱい韓国に出張しておりまして、出社は来週からとなっております」

 

「わかりました。いえ、またこちらからお掛けしますので、結構です」

 

通話を終えると、軽くため息。

「困ったなぁ。“ながさきオーシャン・エコノミー”のアポは、亀田主任を当てにしてたのになぁ」

 

 

午後の光が少し傾き始めたころ、天野はもう一本、電話を取った。

相手は、前回の長崎出張で世話になった“ながさき漁業協同センター”の上田さんだ。

 

「はい、ながさき漁業協同センターの上田です」

 

 

「あ、上田さん。ご無沙汰しています、大阪OBCの天野です」

 

「あら! 天野次長。お久しぶり。弟さんから聞きましたよ、前回の長崎訪問は、その後“トンデモない展開”だったとか?」

 

「はは……大人の大遠足でした。楽しかったですよ」

 

「そりゃ何より!」

 

朗らかな笑いのあと、天野は少し声を落として本題に入った。

 

「今日はお願いがありまして。10月中旬に、長崎と佐賀の鹿島市へ出張予定なんですが、“ながさきオーシャン・エコノミー”関連の施設を見学できないかと思いまして」

 

「“ながさきオーシャン・エコノミー”ねえ。話には聞いてますけど、うちは漁協ですから、直接は関わってないんですよ。あれは、どちらかというと大学とか研究機関の領域ですね」

 

「そうですか……ちょっと残念です」

 

「お力になれず、すみません」

 

「いえ、とんでもないです。逆に、鹿島市について、何かご存知ないですか?」

天野の声には、転んでもただでは起きない、いい意味でのしつこさが宿っていた。

 

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