予定、急遽変更。
2人でチェックインの手続きをしていると、コンシェルジュの女性がこちらに近づいてきた。
「天野さまと大杉さまですね?」
「はい。そうですが」
「ただいま、伊達木がまいりますので、少々お待ちください」
と、間もなく姿を現したのは、一人の女性だった。
目鼻立ちの整った、堂々とした物腰。

「“大阪ビジネスコンサルタンツ”の方ね?」
「あ、はい。そうですが……」
「今夜の夕食、急に予定がキャンセルになってしまって。それでね、宿泊者名簿を眺めていたら、御社の名前と、女性の名前が目に入って――それで、千﨑さんに連絡を取っちゃったの。料亭橋本、すごく好きなお店でね、また行きたいと思っていたところだったの」
天野次長は、言葉を挟む間もなく圧倒されていた。
「では、お部屋で少しお休みいただいて、17時30分にロビー集合でよろしいかしら?」
「承知しました。大杉さんも、17時30分集合で」
「了解です」
エレベーターに向かいながら、大杉主任がボソリと漏らした。
「……あの人、いったい何者ですかね?」
「うーん、どこかで会ったことがあるような……いや、ビジネス誌か何かで見かけたような」
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