オートバイをもう一度(K-1 バトル編 ⑧) | cb650r-eのブログ

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θ(シータ)?

R1の男が、低い声でぼそっと言った。

「下手なアラ還ライダーは、最高速度制限も60キロにする!」

 



「……はあ?」

一瞬、何の話か分からず、俺は困惑した。

するとR1の男が、ズイッと俺に詰め寄ってきた。
その迫力に思わず身構えると――

「山ちゃーん、俺のこと忘れたの? 薄情だねぇ〜」

……ん?

今度はトーンを落として、まるで旧友に話しかけるような口ぶり。

だが、俺にはまったく見当がつかなかった。

「36年ぶりか……干支が3周しちゃったもんな」

ますます分からない。

「昔さ、お前のSUZUKI WOLF 250と、俺のTZR250の後方排気で何度も何度も追いかけっこしたろ?」

その瞬間――


「……思い出した! お前、高野山大学の同級生、“θ(シータ)”か!!」

「ようやく気づいたか!」

R1――いや、かつての“シータ”は、満面の笑みを浮かべていた。

※補足しよう。
“θ(シータ)”というあだ名は、大学時代のある出来事から生まれた。

数学の授業中、彼は居眠りしていた。
突然、教授に名を呼ばれて飛び起き、「θ(シータ)です!」と寝ぼけた返答。
教室中が大爆笑に包まれ、それ以来、彼のあだ名は“シータ”になった。

バイクに関しては筋金入りで、当時から「俺、絶対白バイ隊員になる!」と宣言していた。
そして本当に、交通機動隊で白バイに乗る男になったと聞いていた。

「警察はもう退職したのか?」

俺が尋ねると、彼は照れくさそうに頭をかいた。

 



「おう。今は安全協会のおじちゃんだぜ」

「そりゃ……お似合いだな」

俺が苦笑交じりに言うと、その場にいた全員が、どっと笑った。

 

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