オートバイをもう一度(K-1 バトル編 ⑨) | cb650r-eのブログ

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これまでも、これからも…。仲間たちとK-1

XSRの男が、負けじと前に出てきた。

「山さん、俺のことも……覚えてるよね?」



またもや難題だ。
なんとなく、顔に見覚えはあるが、名前が出てこない。
俺より少し若い――けれど確かに、どこかで……。

「YAMAHAに乗ってるけど、SEED(ホンダ系)を今でも着ているよ。当時はNSR250Rだったからね」

その一言で、記憶の扉がパチンと開いた。

「……わかった、イトケン。伊藤 健一、だな」

「ピンポーン!」

イトケンは、嬉しそうに笑った。

「お前ら、ずっとK-1走ってたのかよ?」

俺がそう聞くと、シータが肩をすくめた。

「まあな。仕事だ家庭だ、抜けてた時期は長かったけどさ」

「俺もです」とイトケン。

時間は流れても、バイクはずっと、心のどこかに残っていたのだ。

「実はな、森から聞いてたんだよ」

シータがニヤニヤしながら言った。

「最近、ネジが何本か抜けた中年ライダーが、峠をせっせと走ってるってな。しかも俺(R1)を目の敵にしてるらしいって」

俺は思わず、森の方を振り返った。

「森~、お前、話を盛りすぎだろ!」

 



「だってさ、山ちゃんバカだから、そっちの方が面白くなりそうだったんだもん」

わざとらしく怯えたポーズを取る森に、吹き出しそうになりながら怒鳴る。

「アホか、お前は!」

全員が笑った。
自然と、あの頃の空気が戻ってくる――そんな気がした。

シータが一歩前に出て、静かに言った。

「……よーし。儀式は終わったな」

そして、力強く続ける。

「俺たちは、仲間だ。K-1はこの50年間、いつでも、誰でも、初心者でも、楽しく走れるコースであり続けてる」

「安全運転、無理は禁物。……山ちゃん、そこんとこ、ヨロシクな」

「了解!」

俺はまっすぐ彼の目を見て、力強く返した。

天気のいい日曜日。

K-1の風は、まるであのバブルの時代のように、心を軽くしてくれる。

俺は今、あの頃に戻ったような――
なんとも言えない、幸福感と高揚感に包まれていた。

 

 

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