CCRC…。
週初の定例ミーティング。
部内の会議室は、俺たちメンバー5人がちょうど収まるくらいの広さ。
いつものように、静かに始まるかと思いきや――
珍しく、千﨑部長が自ら口火を切った。
「今回の案件だが……IR(統合型リゾート)の誘致を見送った九州のある自治体からのオーダーだ」
「ほう……なんでしょうか?」と、思わず声が出る。
部長は少しニヤリとしながら俺の方を見た。
「おそらく、介護業界に明るい山本副部長なら、すぐにでも対応できる案件だと思ってな」
「はぁ……?」
正直、何のことやら。
「日本版CCRCですよ」

部長の声に、微妙な圧がこもる。
懐かしいフレーズだ。
「……ああ、久しぶりに聞きましたねぇ、その言葉」
CCRC――Continuing Care Retirement Community。アメリカの高齢者向けコミュニティモデルを日本版に落とし込もうとした、あれだ。
「本件は、山本副部長をリーダーに、天野次長、大杉主任がサポートについてくれ」
「了解しました」
俺たち3人が、軽く頷く。
「自治体からのオーダーは、“日本版CCRC実現への視点”というテーマだ」
部長の言葉に、会議室の空気がほんの少しだけ引き締まった。
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