次は海外。
福井出張の余韻もようやく冷めた4月のある日の午後、千崎部長のデスクに呼ばれた。
「山本副部長は、当然パスポートを持ってますよね?」
「それが、あいにく…コロナ禍もあって切らしておりまして…」
「おやおや、上海駐在経験のある国際派の山本さんともあろう方が…」
「勘弁してくださいよぉ、部長」
「早速、明日にでもパスポートを申請してください。次の出張に必要ですから」
「海外ですか?」
「そう、インバウンド”の最新トレンドをつかんでほしいのですよ」
「韓国ですか?」
「その通り!ソウルに飛んでください。」
部長には言わなかったが、俺は中国に駐在したことはあるが、韓国には一度も行ったことがない。
なんとなく、最近の日韓関係やら政治の混乱を見ていると、気が進まなかったというのが本音だ。
「韓国語はわかりませんけど…」と俺は言った。
「向こうでは、日本商工連合会ソウル事務所長の小里鉄矢さんと、日本輸出振興会ソウル事務所長の前田直樹さんとランチセッションしてください。オール日本語です。それ以外はフリーですから、ロッテタワーでもどこでも観光してきてください。ちなみに、小里さんも前田さんも、私の古くからの友人ですので、ご安心を」
「分かりました」(部長の人脈、すごいねぇ)
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