CB650Rの適切解
正しいか、間違っているか。
早いか、遅いか。
カッコいいか、悪いか。
そんなことは、今の俺には関係ない。
俺の走りの基準はただひとつ──「事故リスクの最小化」。
スピードをなるべく落とさずコーナーに進入する。「ヒラリヒラリ」と機敏にではなく、「ジワジワ」とリーン(車体を傾ける)。コーナー中も前後ブレーキを併用し、出口ではリアタイヤのグリップを感じながら、慎重に加速。
これが、俺のCB650Rの最適解だ。
森君は直線で俺を追い越すと、手でスピードを落とせとジェスチャーし、「K1ビデオコーナー」と呼ばれる場所でバイクを止めた。
ヘルメットを脱ぎながら、俺に近づく。
「おじさん、話を最後まで聞けよ!今日はR1がこの峠に来ている。バイクをここに停めて、じっくり見てみなよ。俺が言ったことが、きっとわかるはずだからさ。」
しばらくすると、遠くからR1のエンジン音が聞こえてきた。
俺は、R1の走りを見て、言葉を失った。
何か森君が呼びかけてきたようだったが、耳に入らない。俺は無言でヘルメットを被り、そのまま家路についた。
帰宅後、すぐに身支度を整え、妻の華と長女の彩とともに大阪駅へ向かう。そこで次女の史と合流し、一家で博多行きの新幹線に乗り込んだ。
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