腹落ちしたよ。
森君は、俺の後ろを走った時のことを思い出しながら、まるで予備校の先生みたいに語り始めた。
「R1は高速を保ったままコーナーに向かい、コーナリングに入る直前に前後のブレーキをかけて、一気に車速を落とす。おじさんはコーナー手前からじわじわ減速。ここで0.3秒離れる。コーナリング速度はさておき、コーナー出口でR1は車体を起こしてフルスロットル、おじさんはハーフスロットル。はい、ここで0.3秒差。つまり、一つコーナーを回るごとに0.6秒ずつ遅れる。何個か回ったら——『はい、さよなら』ってわけ。分かった?」
「なるほど……。」
「『なるほど』じゃねえよ、まったく。おじさんは、グルメと温泉が大好きなツーリングライダーって決まってんだからな!」
「言うねぇ、森君。でも、君の言ったこと、腹落ちしたよ。」
「何だ?『腹落ち』って?切腹でもする気かよ!」
森君が叫ぶのをよそに、俺はさっさとヘルメットをかぶり、グローブをはめた。
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