本当に知らなかった。
「マジか? おじさん、本当に知らないの? 市販車の中でも最速って言われてるぜ。何しろ300万円もするし、ほとんどレース仕様のバイクに保安部品を付けただけみたいなもんだ。まぁ、速いのなんのって、俺様でもコーナーを二つも曲がれば置いていかれて、追いかける気力もなくなるね。」
森君が続ける。
「とにかく1000ccのモンスターバイクを、まるで250ccのライトウエイトスポーツみたいに、ヒラリヒラリと倒し込んでいく。これは噂だけど、元白バイ隊員とか、元プロレーサーだったって話もあるくらいの切れ者らしいぜ。」
「そうか、それほどのライダーなら、一度その走りを見てみたいもんだな。」
「冗談きついぜ、おじさん。」
「おっさんのバイク、何馬力? R1は200馬力だぜ。」 「それに、おじさんのCBってオートマだろ? スクータータイプじゃ、逆立ちしても敵わないよ。」
やはり、そうなるか──と俺は心の中でつぶやいた。
「じゃあさぁ、俺様がおじさんの走りを後ろから見てやるよ。抜きはしないから安心しなよ。ただし、俺の前で絶対にコケんなよ!」
「了解、了解。安全運転で行きましょう!」と俺は森君に言った。
俺はヘルメットを被り、グローブをはめて、セルを回した。 すぐにNinjaのエンジンにも火が入り、バックミラーにはスタンバイした森君の姿が映っていた。
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