みやぞん?
Ninjaは、俺のCB650R E-Clutchの横に静かにバイクを停めると、すばやく降り、ヘルメットを脱いだ。
Kawasakiグリーンでコーディネイトされたヘルメットとクシタニのレザーのツナギがいかにも走り屋の雰囲気を醸し出している。
「ちゃーす!」
20代半ばぐらいの若者だ。人の容姿をどうこう言うのは俺の主義に反するが――いや、言わせてもらおう。
顔はお笑いタレントの「みやぞん」にそっくり。ただし、体格は一回り小さい。
「はい、こんにちは」
「おじさん、見ないバイクだけど、ここは初めて?」
「まあ、そんなところだな。正確には……20年ぶり、かな」
若者は興味深そうに俺のバイクを眺める。
「ホンダのCBか。きれいだけど、新車?」
「まだ2,000キロくらいしか走ってないな。いわゆる“リターンライダー”ってやつだ」
「ふーん。おじさん、久しぶりに戻ってきたって感じ?」
彼の視線が、一瞬だけ鋭くなった気がした。気のせいか?
「君のバイクはNinja 250だね。クォーターでは唯一の4気筒、いい音してる」
「だろ? 正確には「ZX-25R」これ、めちゃ高いんだよ!」
「そうらしいね」
俺が軽く相槌を打つと、彼はふと、エンジンに目をやった。
「……おじさんのバイク、これ、雑誌で見たことある。最近話題のオートマチックのやつじゃん」
「いや、正確には違うけど……まあ、そんな感じかな」
若者はニヤリと笑う。
「歳を取ったら、オートマがいいよね」
その言葉に悪意はない。むしろ、どこか無邪気な響きさえあった。だが――なぜだろう。この会話の流れに、うっすらとした違和感があった。
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