いよいよ納車。
さて、2024年8月の日曜日の昼下がりのことである。 俺には2人の娘がいる。長女は阪大の医学部医学科の4年生、次女は阪大の理学部数学科の1年生。 2人とも夏休みで、実家に帰省している。
俺は、寝転がりながら「CB650R E-clutch」のカタログを眺めていた。 そこに、2人がニヤニヤしながら近づいてきた。
「お父様、退職金でバイクを買われたんですね。しかも新車で。」と長女。 「お高いんでしょ~?」と次女。
「正しくは『積立ニーサ』、つまりパパのへそくりです。」
「ズルーイ!」 「私たちにも買って~買って~!」
「何を買うんだ?」
「え~、まずは長女の私から。アメリカ製の聴診器、色はワインレッド一択! 臨床学習がそろそろ始まるんだよね。」
「私は、YAMAHAの2輪! 通学に使うから、アパートに届けてください。」と次女。
「今、取ってるのは車のAT免許だろ?」
「電動自転車っす。10万円超えのやつ。」
「わかった、わかった。」
「私は携帯電話の機種変で~」と妻の華が、話に加わった。
「それも含めて、了解、了解。」
2024年12月26日の午後、家の納屋にCB650R E-clutchが収まった。 妻と子供たちが音を聞きつけて、見に出てきた。
「かっこいいねぇ!」
35年間の俺へのご褒美。 「いいんじゃねぇ?」と俺はつぶやいた。

第一部終
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