オートバイをもう一度(127) | cb650r-eのブログ

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貿易投資相談所の行方は…。

 

2011年3月のある日、小川常務から突然の電話がかかってきた。
「8階の俺の部屋に来れるか?」
「えっ、私、何かやらかしましたかね?」
「いやいや、相談ごとだ」

そのやり取りだけで、なんだか妙な胸騒ぎがした。小川さんの「相談」と言えば、たいていは面倒事か厄介事に決まっている。

「山本、お前、貿易投資相談所で何年になる?」
「12年ですかね」
「バイクには乗ってるのか?」
「いや、BMWは手放しました」
「俺もだ。役員になったときにバイクは卒業したよ」

どうやら雑談から始めるつもりらしい。


話は遡るが、2005年頃のこと。
週末の朝、俺は新聞を広げながら、コーヒーを一口すすっていた。ところが、その時、マグカップが突然手の中でガクンと傾き、コーヒーがテーブルに派手にこぼれた。
「もう、よそ見するからよ!」と妻の華が呆れ顔で注意する。

だが、それは単なる不注意では済まなかった。その後も何度かカップが手の中で滑るようになり、どうも左手に力が入らないことに気付いたのだ。

久しぶりにBMWのクラッチを握ってみた時も同じだった。
「重い…」と思わずつぶやく俺。愛車K75は元々クラッチが重めで、しかも油圧式ではない。だが、握る感覚が以前とは違う。さらにバイクの下を見ると、地面にオイル染みが広がっているのが目に入った。エンジンブロックからオイルがにじみ出ている。
「もう潮時か…」そう俺はつぶやいた。

バイクはお世話になったバイク屋に引き取ってもらうことにした。

「さて、本題だ」と、小川常務が言った。
「法人ソリューション部を再編して、新たに『ソリューション推進部』を立ち上げることにした。次年度から稼働する。その名の通り、お客様の“お困りごと”に解決策を提案するのが仕事だ」
具体的には「法人グループ」、「M&Aグループ」、「医療・介護グループ」の3つで構成されるらしい。

「で、山本、お前にはソリューション推進部に異動してほしい」
「えっ、私が…法人グループですか?」
「まあ、グローバルチームは作る。3人構成だ。リーダーは取手 豪、あとお前の同期の吉富 太郎、それにお前の相棒だった北浦 勉。どうだ、ベストメンバーだろ?」

やたら満足げな顔の常務に、俺は言葉を詰まらせた。
「貿易投資相談所はどうなるんですか?」
「グローバルチームが全部引き継ぐ。それで問題ないだろ?」

常務の決断はあっけなく、そしてやけに強引に感じた。

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。