Letter from Japan
数日後、林夫婦と華さんが映った写真が焼き上がった。それぞれに焼き増し、手紙を添えて郵送することにした。数日後、林ご夫妻からも、写真と旅の思い出をつづった丁寧なお返事が届いた。
そしてしばらくして、華さんからもお礼の手紙が来たのだが、その内容が俺の予想を大きく裏切るものだった。簡潔にまとめると、こうだ。
「上海では大変お世話になりました。そして、私、決めました。これから二ヶ月に一回のペースで上海にお邪魔することにします! 山本さんもお忙しいでしょうから、基本的に土日を挟んで2泊3日。次回は蘇州に行きたいと思っています。候補日は以下の通りですので、山本さん、選んでくださいね。それから、食事ですが、シーズンが合えばまた上海蟹をお願いします。追伸、今度はアクアチウム持参します!」
…俺は思わず二度読みした。「決めました」って、何を勝手に決めたんだ。
結局、華さんは1999年の2月まで、本当に隔月ペースで上海にやってきた。そのたびに、うまいものを食べ、観光名所を巡り、上海雑技団を何度も見に行った。もちろん、「アバンティ」にも連れて行った。
ただ、一つだけ困ったことがあった。華さんは毎回、伊丹空港の入国審査で足止めを食らうのだ。
<伊丹空港・入国審査場>
「上海に頻繁に行かれる理由は何ですか?」
「旨い食べ物、異国感満載の観光地、圧倒的なエンターテイメントってところかな。」
「それにしても頻繁すぎませんか? 誰かに荷物を預けられているとか、そういうことは?」
華さんは「ハァ~?」不満げなリアクションを取っていたようだ。何度説明しても、審査官の疑念は晴れないまま。
華さんには悪いが、彼女の天真爛漫さが時として仇となることを俺は悟った。
