それなら4人で
「それなら、今日明日、私たち4人で行動しましょうよ。山本さん、いいでしょ。」
謝さんは、何となく察したのか、指でOKサインを出している。「私、車で待っています。」と謝さんは片言の日本語で言った。
実は、謝さんには、食事も同席してもらうつもりだったが、辞退の意向らしい。
「ご夫妻がよろしければ、私は、かまいませんが…。」
「じゃあ決まり。」 奥様は何かうれしそうである。
まず、大西洋ホテルに林社長ご夫妻をチェックインさせ、俺は、華さんを歩いて揚子江ホテルに案内した。
チェックインが終わってロビーのソファーに座っていた俺のところに、華さんが戻ってきた。そして俺の顔をじっと見ていった。「山本さん、肌荒れてるねぇ。」
そう、この半年、水が合わないのか、食事か油か。顔の吹き出物がひどい状態だった。
華さんは、ポーチを取り出して、ごそごそしだした。「やっぱり、持ってこなかったか。」そういうとオレンジキャップの小さなチューブを差し出した。
「『VG』という薬で、ステロイド系の強い塗り薬。本当は「アクアチウム」がいいと思う。ただし、これは私が、置き忘れたものをあなたが拾って、勝手に自分で、塗ったのである。私は処方しておりませんので、そこんとこヨロシク。」
「はあ、ありがとうございます。」と俺は言った。実は、上海に来て唯一の心配が、この顔の吹き出物であり、本当にありがたかった。
このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。
