まさか!Jakeさんも?
ジェイクさん最後の日の雰囲気(※音量注意)
「さて、今日は金曜日だ。まずは前祝いと行こう。初芝電産の北山さんも誘ったらどうだ?」と小川次長が言った。 「あと、小笹さんも誘いましょう。」と俺が答え、「じゃあ、7時にアヴァンティに集合だ。」ということになった。
「いらっしゃいませ」 「ジェイクさん、こんばんは~。奥のボックス席に4人いいですか?」小川次長が続ける。
「まず先にご報告がありまして、実は私は大阪の本店に戻ることになりました。そして山本のやつは国外追放…っていうのは冗談ですが、中国の上海に行くことになりました。」続けて、 「もう、しばらくここに来れないのは残念です、ジェイクさん。」と俺は言った。
「そうでしたか。それは、ご栄転おめでとうございます。実は私もアメリカに帰ることにしたんです。今月末に。お店は今日までです。」 「そうでしたか。」と小川次長が言うと、その場がしんみりとした雰囲気になった。
「ただ、店はそのまま続きます。後任のバーテンダーはアンジェロといいます。北山さん、小笹さん、引き続きごひいきにお願いしますよ。」とジェイクさんは言うと、サーブから戻ったアンジェロさんが「ヨロシク、オネガイシマス」と会釈した。
「今日はお祝いですので、私からワインを1本差し入れさせていただきます。」とジェイク。 「やったー。ジェイクさんありがとう!」と俺たちは素直に喜んだ。
小笹さんが音頭を取ってくれた。「小川部長と山本副支店長、北山係長、私、小笹の今後ますますの活躍を記念して…。」 その時、アヴァンティの入口のドアが開いた。「その乾杯、待った~。」 「うわ、有永さん」と俺。 「ホントに来たのか。」と小川次長。 「この期末の忙しい時期に、自分たちだけ楽しいことやってんじゃねえぞ~」 「ジェイクさん。生ひとつ!」
その日もいつも通りの楽しい夜となった。 今日だけは、ジェイクさんが、常連客とカウンター越しに話したり、ボックス席に来て話しかけていた。
帰り際に、ジェイクさんが私に声をかけた。「中国の上海に、私の弟子が一人います。中国上海の平和飯店(Peace Hotel)の1階のバーでバーテンダーをやっています。名前はスタンといいます。店の名前は『AVANTI-Shanghai』。ぜひ一度尋ねてみてください、山本さん。」 「分かりました。平和飯店の1階ですね。必ず行きます。」 「私からスタン宛にレターを出しておきますよ。」 「楽しみです。」 「気をつけて、行ってらっしゃいませ」 「ジェイクさん。本当にありがとう。」
俺たちだけでなく、店を出ていく客たちはジェイクさんと皆、握手して別れを惜しんでいた。
