「CB650R e-clutch」、注文したにちがいない。
電話の主は誰?
さて、話が多少前後するが、1995年4月下旬のある日、机の前の電話が鳴った。職場のお局こと平野さんが外線電話を回してくれたのだ。
「初芝電産の北山さんから、山本主任宛ての外線です」
「初芝電産の北山さん? 誰だっけ?」
受話器を取りながら応じた。
「はい、山本です」
「山本さん、お久しぶりですね」
気味の悪い低い声だった。
「はぁ、どうも」
「忘れられたら困りますね~」
「どちらの北山さんでしょうか?」
「山ちゃん、ひどいよ~。連絡くれないし~」
聞き覚えのある声だ。
「まさか、高野山経済大学の留年男の北山か?」
「そうだよーん。ひどいよ、山ちゃん。昨日、山ちゃんの実家に電話したら、大阪貿易の東京支店にいるっていうじゃないか。てっきり大阪にいると思って連絡しなかったら、まさか2年前の春から東京に異動になってたなんて。おふくろさん元気そうだったけど」
北山が続ける。
「俺な、大学で1年長く勉強してさ、バブルのおかげで平成3年春に初芝電産に入れたんだよ。今は北米向けのパソコン輸出を一手に任されてるんだ。お前、よく聞けよ、俺のデスクの隣に誰が座ってると思う? あのホームラン王のむす…」
「待て、北山! 電話じゃ無理だ。今日の夜7時、地下鉄銀座線の京橋駅、東京生命ビル1階のひまわり銀行のATMコーナーに来い! 絶対だぞ!」
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