【1995年当時】
1995年6月3日、野茂英雄が「7度目の正直」でメジャー初勝利を挙げた。活躍を続ける日本人大リーガーのパイオニアは、もちろんこの人である。
【エバンティにて】
店内の雰囲気BGM(音量注意!)
1995年6月2日金曜日、夕方6時半、小川次長と小笹さんは、いつもの「バー・エバンティ」で飲んでいる。そこに、俺は30年後の2025年の世界へのタイムトラベルから戻ってきた。
「いよいよ、野茂は明日7度目の登板だな。次こそは初勝利しそうな予感がする。いや、間違いない。」と小川次長は小笹さんと野球談議をしている。
「小川次長、小笹さん。2025年のメジャーリーグがとんでもないことになっています。」俺は息を切らしながら言った。
「まあ、落ち着け山本。ジェイクさん、お水を一杯ください。」
「どうした、野茂がドジャースの監督にでもなっていたか?」小川次長はニヤリと笑って言った。
「違うんです。ドジャースのOhtani Shoheiという日本人が、ピッチャーで21勝、防御率1.89、ホームラン51本、盗塁50、ワールドシリーズ優勝。満場一致でMVP、サイヤング賞を受賞したんですよ!」
「山本。お前、働きすぎだ。食生活も見直した方がいいぞ。」と小川次長がなだめるように言う。
「そういう、夢を見たって話だろ。山本。」小笹さんが続ける。
「まあ、夢みたいなもんですけど。」
「よし、山本、お前が見た夢とやらをゆっくり聞かせてくれ。」小川次長が真剣な顔で言った。
「えーと。Ohtaniが飼っている犬がいるんです。名前が『デコピン』っていうんです。」
「うん、いい名前だな。」
「そのデコピンが始球式をするんですが、それが見事なストライクで…。」
「そうか、そういうこともあるだろう。山本よ。」
「で、Ohtaniの給料は10年で1000億円なんです。」
「ということは、年収100億円、160試合出場として、1試合6000万円くらいか。割のいい仕事だな。」「それで…。」
「165kmの『フォーシーム』と、とんでもなく曲がる『スイーパー』を投げるんです。」
「新しい魔球だな。」と小川次長。
「とにかく、漫画みたいなんですよ」と俺は食い下がった。
「漫画にしては糞面白くねーなー。」と小笹さん。
小川次長が腕を組んで、目をつむって上を向いた。
「うーん、山本。来週、何日か休め。支店長には俺から言っておくから。」
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