私の CB650R e-clutch は、納車遅延中です。
部長、くぎを刺す。
「よし、松茸は部員一人一箱持ち帰りにしよう。残りは1階の本店営業部の連中に、家庭用だと『くぎを刺して』配ってくれ。全部には入っていないと思うが、箱の表に『釘入り・注意』と貼っておけよ。あと、この件は他言無用と付け加えて渡してくれ。」と田沼部長が言った。
「あと山本。輸入代金は私が個人的に支払う。代わりに、総務に頼んで、秋の果物かなんかをお取引先用に手配してくれ。おっと、こっちは経費でよろしく。」
「わかりました。」と私は答えた。
終業時刻近くになり、私はL/Cの開設依頼書の控えを持って田沼部長の前に立った。 「私が、従前に比べて、L/Cの条件で、重さについて先方にプレッシャーをかけたのが良くなかったのでしょうか?」
田沼部長はL/Cの明細を見ながら言った。「俺は以前お前に言ったよな。覚えているか?」
「はい、『グローバル感覚を養え』です。」
「Yes!」田沼は人差し指を私に向けた。
「おそらくだが…、輸出者は『悪いことをした』という感覚はあまりないかもしれない。L/Cの条件に一箱300g前後にしろと書いてあるから、そうしただけなのかもしれない。今回で取引が切れても、もっと高く売れる先を確保しているのかもしれない。いや、むしろ切りたかったのかもしれない。」
「山本。お前は何も間違っていない。ただ、輸入者だけでなく輸出者の立場に立って考えることができれば、これから、もっといい貿易ができるかもしれんな。」
彼の指摘は、取引の本質を突いたものだった。
このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。
