オートバイをもう一度(12) | cb650r-eのブログ

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チョップ印

 

 私は慣れない手つきで、シスター社のタイプライターを使い、元住銀行向けの信用状開設依頼書を打ち込んでいた。貿易に関わる銀行書類は厚く、6枚複写など当たり前だ。シスター社のタイプライターは、そんな私にとって頼りになるパートナーだった。
 仕上がった書類にはミスタイプが目立ったが、取手は「没問題、没問題(メーウェンティー)」と軽やかに口ずさみながら、小さな丸いゴム印をポンポンと押していく。そのゴム印には細かい文字で「THE OSAKA TRADE CO. LTD」と刻まれていた。後に知ったことだが、これは「チョップ印」と呼ばれ、訂正印としてよく使われるものだった。
 チョップ印だらけになった信用状開設依頼書に、私も係印を押し、取手がそれを今福課長に提出した。課長は不満げな表情を浮かべていたが、取手が何か小声で説明すると、しぶしぶながらも検印を押してくれた。その依頼書は元住銀行の国際部宛にFAXで送られ、原本は嘱託の社員さんが、他の領収書や請求書とともに、元住銀行に配達してくれた。

 それから2週間が過ぎたある朝、大阪港のコンテナヤードにある関西ロジテクスから電話がかかってきた。輸入書類はすでに元住銀行経由で当社に届いており、その日の為替相場で円に換算した金額を吉本衣装の経理担当者に伝えたところ、午後には当座預金に入金されていた。



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